刹那の奏法

□music08 音楽への心情
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「あ、おはよう!月森くん」

「おはよう。紫彗さん」


コンクール当日の朝。

校門の前でばったり、月森くんに出会った。





music08 音楽への心情





「早いね」

「そうか?普通だと思うが」

「まぁ…確かに普通か」


月森くんがサラッと答えてしまうから、何も言えず少しの間沈黙が続く。

そして、お互いにひとことも喋らないまま控え室の前まで来てしまった。


「それじゃあ、今日は頑張ろうね!」


女子更衣室に入ろうとドアに手をかけたところで、呼び止められた。


「紫彗さん」

「ん?」

「……いや、やっぱりいい」

「…そう?」


そう言うと、月森くんはそのまま男子更衣室に入っていってしまった。

月森くんはこの間から何か言いたそうなんだけど……

今度、私の方から聞いてみようかな?

ふと、そんな風に思った。


「あ、おはようございます。紫彗先輩」


更衣室に入ると、すでにドレスを身に纏った冬海ちゃんがいた。


「おはよう、冬海ちゃん。あ、その衣装凄く可愛いね!」


冬海ちゃんが着ているのは黄色の生地にピンクのレースが着いたバルーンドレス。

ドレスと同色のヘッドドレスも合わせてて、凄くかわいい。


「…え」


私がそんなことを思ってると、目の前の冬海ちゃんが意外そうな表情をする。


「え…私なんか変なこと言った!?」

「いえ、その……冬海ちゃん、って…」

「あぁ、前に火原先輩がそう呼んでたからつい……いけなかったかな?」

「いえ、そんな!う、嬉しいです…」


そう言って俯いた冬海ちゃん。

そんな仕草をする友達はまわりにいないからその可愛い反応が凄く新鮮で……不覚にも少しだけときめいてしまった。


「あ、私先に行きますね」

「うん、また後でね」


そう言って冬海ちゃんが先に部屋を出て行ってしまったので、私は取り合えず荷物を置いて、ドレスに着替え、着々と準備を進めた。

すると突然、どこからかリリが現れた。


「調子はどうだ?紫彗珠葵」

「うん、悪くはないよ」

「そうか」


準備はもう殆ど終え、舞台裏に行こうかと思った瞬間、急にドアが開き、ちょっぴり青ざめた香穂が慌てて入ってきた。


「おはよー香穂」

「そんなー珠葵までー」

「…え、私何かした!?」

「なんでみんなあんな格好してるのよ!?」

「「なんでって…コンクールだから(な)」」


頭に疑問符を乗せながらリリと声を揃えて香穂に言う。

すると香穂は、がっくりとその場に項垂れてしまった


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