刹那の奏法
□music02 懐かしの面影
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「「金澤先生!」」
お昼休みは時間がなかったため、授業を終えた放課後に、まずコンクール担当の先生を探しに行った。
コンクールの担当の先生は金澤先生だと教えて貰った私と香穂は、金澤先生の元へと急ぎ、今に至る。
music02 懐かしの面影
「あの…私、2年の紫彗と申しますが…」
「同じく日野といいます」
「あぁ、参加者の」
「そのことでお話に来たんです!どうして私たちが参加者に選ばれているんですか!?」
「…何かの間違いじゃ…」
凄い剣幕で言う私と香穂に、先生はまず落ち着けと宥める。
私が口を噤むと、先生は一息ついてから口を開いた。
「いや、お前さんたちで間違いないはずだ。選ばれたってことはアレを見ちまったんだろ?」
「先生にも見えるんですか!?」
「いや…全然」
先生の発言に、香穂がすかさず突っ込むけれど、先生はあっさりと否定の言葉を口にする。
「俺は校長から聞いたことを伝えるだけだ。そうだお前さん…日野の方に伝言だそうだ。放課後、練習棟に来いってさ」
「放課後って……もう放課後、ですよね?」
「だったら急「かっなやーん」
私が急がなきゃ、と言おうとしたら、突然誰かに言葉を遮られた。
声のした方を振り向くと、そこには音楽科の制服を着た人がふたりの人の姿があって……
そのうちの一方の人を見た瞬間、唖然となったけれど、態度には出さずに精一杯冷静を装う。
「おれたち選ばれたよ、コンクール」
「先生が担当だとお聞きしてご挨拶を…」
「あーっ。もしかして普通科から参加する子?おれ3年の火原和樹。専攻はトランペット。よろしくね」
そう言いながら、火原先輩はニッコリと笑い、私と香穂の手をぶんぶんと上下に振る。
「なんだか嬉しいな。普通科の子も参加するなんて。楽しいコンクールになるといいね」
「ほら火原、そんな一方的に話したら彼女たちだって困ってしまうよ」
「あっ、ごめんね」
私たちが困っていたからか、柚木…先輩がそう言い、火原先輩は慌てて私たちの手を離す。
「本当にごめんね。僕は柚木梓馬です。専攻はフルートなんだ。えっと、日野さん……と紫彗さん、だよね?楽器は何を?」
「……」
「フルートだったら大変だなぁ。ライバルが増えてしまうものね」
「もしかしてトランペット?」
黙ってる香穂(と私)に向かって先輩ふたりがそう言う。
「いえ、その……違うんです!私たちには関係ないんです!行こっ、珠葵」
香穂が先輩ふたりにそう叫ぶように言い、私の手を引っ張る。
「ちょっと香穂……あ、失礼しますね、先輩方」
私は香穂に引っ張られなる中でそう言い残し、この場を後にした。
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