刹那の奏法
□music04 実力お披露目
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「珠葵、どうしよー……もう放課後になっちゃったよー」
今日は例のお披露目の日。
香穂は朝から「どうしよう」としか言ってなくて、よっぽど焦ってる……みたい。
私はというと、一応あの音楽科の人たちを吃驚させるくらいの仕上がりにはなったかな、と思ってはいるんだけど……
正直なところは微妙かもしれない。
music04 実力お披露目
「どうしようって…ここまできたらやるしかないでしょ?」
「そんなこと言われてもー」
「昨日、あの後火原先輩にもアドバイス貰ったんでしょ?」
「そう、だけど……」
「昨日はバッチリ弾けてたし、そんなに心配しなくても大丈夫よ」
昨日の放課後に香穂に聴いて欲しいと言われたから、聴いてアドバイスしたんだけど、そのときはちゃんと弾けていたから、大丈夫だと思うんだけど……
「―――っ……珠葵はあがったり、不安になったりしないの?」
「全くないって言ったら嘘になるけど……ま、軽い気持ちでやろうよ!」
人がそれなりに集まるだろうし、全く緊張しないわけがない。
でもコンクールよりは緊張はしないと思うし、多分大丈夫。
「珠葵、香穂、行かないの?今日なんでしょ?」
「今行く。…もしかして、直と美緒も聴きに来るの?」
「「もちろん!楽しみにしてるからね」」
ふたりで声を揃えて言う。
おまけに、笑顔付き。
…そんなこと言われちゃうと逆に緊張してきちゃうよ……
「とりあえず……行こうか?香穂」
「……そうだね」
私と香穂はお互いにヴァイオリンのケースを持ち、正門に向かった。
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