刹那の奏法

□music20 譲れない感情
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「休日の公園って結構人がいるんだね……」


楽器店の帰り、ちょっと外で弾いておこうと思い、公園に寄ったまでは良かったんだけど……


「まさかこんなに人がいるとは……」


人前で弾くのは大切だけど、こんなに人が行き来する場所で弾くのはちょっと抵抗がある。

そう思った私は、あまり人のいなさそうな場所を探すことにした。





music20 譲れない感情





「……バスケコート?」


あまり人のいなさそうな場所を探して歩いていると、フェンスに囲まれたバスケコートを見つけた。

そこでは、何人かの人が楽しそうにバスケをしている。


「ふふ、楽しそう」


そう思った瞬間、ボールを持っていた人がきれいにシュートを決めた。


「やったーっ!」


シュートを決めた人が、そう言う。

その声には聞き覚えがあって、更にその人がこちらを振り返った。

その人には見覚えがあって……


「……火原先輩?」

「え…?あ、紫彗ちゃん!」


私の声に気づいた先輩がこっちに向かって駆けてくる。

ガチャ、とフェンスを開け、私と先輩が対峙するような形になった。


「どうしたの?紫彗ちゃん。あ、もしかして練習とか?」

「いえ、楽器店の帰りなんです」

「楽器店?」

「はい」


弦を…と続けようとした瞬間、誰かに言葉を遮られた。


「和樹、学校の子か?」

「うん、そうだよ兄貴。2年生の紫彗ちゃん」

「はじめまして、紫彗といいます」


ニッコリと微笑んでそう言うと、目の前の人も笑ってくれて。


「はじめまして、兄の陽樹です。いつもコイツが迷惑かけてるんじゃない?ゴメンね」

「いえ、そんなこと……こちらこそお世話になってます」

「ちょ、余計なこと言うなよ兄貴!」

「ふーん、和樹の後輩かー」


横から声がして振り向くと、フェンスのところにさっき火原先輩と一緒にバスケをしていたであろう人たちがいた。


「はじめまして、火原先輩の後輩の紫彗って言います」


ニッコリと微笑んでよろしくおねがいしますね、って言ったらみなさんもよろしく、って返してくれた。

流石火原先輩と火原先輩のお兄さんのお友達。いい人ばっかりだわ。


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