刹那の奏法

□music21 迷惑の掛け方
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「楽しみだねーヴァイオリン教室」

「そうだね」


お昼休みに王崎先輩からヴァイオリン教室のヘルプ(…でいいのかな?)を頼まれ、楽しそうだと思った私と香穂と和樹先輩と桂ちゃんは二つ返事で引き受け、金澤先生と王崎先輩の二人に頼まれた蓮くんも渋々了承し、放課後音楽室に集合と言われた。

そんなわけで、今香穂と一緒に音楽室へ向かっている。

そして、音楽室に着いた瞬間、ポケットの中の電話が鳴り響いた。

メールかな?と思いながらポケットから携帯を取り出すと、ディスプレイに表示された名前はお父さんで、しかも電話……

どこか嫌な予感を感じつつ、通話ボタンを押した。





music21 迷惑の掛け方





「ここ…だよね?」


やっとの思いで到着した目的地は、目の前のとても大きな病院。

病院の前で一呼吸してから、病院内に足を踏み入れた。

お父さんからの電話の内容は、「お母さんが倒れた」ということだった。

過労で倒れてしまったらしく、大事には至らないらしいけど電話の向こうのお父さんはまだ何か言いたそうで……

仕事先で倒れて近くの病院に運ばれたから、お母さんが今いる病院は神奈川ではなく東京。

それを知った私は余計に血相を変えて学校を飛び出した。

そしたら丁度校門で梓馬に会って、駅まで送ってもらって……

後日ちゃんとお礼を言おう、と思いながら電車に乗って東京まで来て、住所を頼りに頑張って病院前までやって来て……今に至る。

お母さんの病室はメールで教えてもらっていたから、まっすぐと病室に向かう。


「えっと……ここ、かな?」


病室を確認しつつ、ドアをノックする。


「早かったね」


するとドアが開き、お父さんが病室に招き入れてくれた。


「お母さんは?」

「今は寝てるよ」


ベッドに寝ているお母さんを見据えると、確かに顔色は悪い。

最後に会った時はこんなに具合悪そうじゃなかったのに……


「お母さん、リサイタルは終わったんだよね?」

「あぁ、リサイタルは無事終わった。けど、殆ど休む間もなく今度あるチャリティーコンサートの練習に入ってな……」

「それはいくらなんでも無茶しすぎだよ」


リサイタル前はこれでもかというくらい無茶して練習に励んでいたのに、リサイタル後に休まずにすぐ次のコンサートの準備に入るなんて……


「珠葵、ちょっと外に出ないか?」


ポン、と軽く私の肩を叩き、お父さんがそう言う。


「…うん」


お父さんの目は話がある、と訴えていて。

この状況からすると、お母さんのこと…かな?なんて思いながらふたりで病室の外に出た。


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