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□午後22時の、回想
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「…隼人のバカ」
ベッドに横になり、ボソッと呟いく。
「ほんとなら今頃……」
―――…一緒に笑っていられたのに。
学校から帰ってきてからずっと塞ぎこんでいたので、鞄はほったらかしで、カーテンも開けっ放し。
もうこんな時間だからカーテンくらい閉めようとベッドから起き、窓に近づいた瞬間、家の門のとこに誰かがいるのが見えた。
「…う、そ……」
そんなはずないのに、と思いながらも私は慌てて階段を降りて、家をのドアを開ける。
そして門の辺りに近づき、呟くように彼の名前を呼んだ。
「隼人……」
すると、俯いていた隼人は驚いた表情を浮かべて顔をあげ、慌てて立ち上がりると……私を抱き寄せた。
「…良かった。無事だったんだな」
抱き寄せてくれた隼人の手は凄く冷たくて、体も凄く冷えていた。
まさか、ずっとここにいたの…?
「…無事って……?」
「待ち合わせ場所に来なかったから事故にでもあったのかと思った……」
「…携帯で連絡してくれれば良かったのに」
「電池、切れちまってな……連絡の取りようがなかったんだよ。だからここにいれば会えるかと思って……とにかく、良かった…」
ぎゅ、っと更に強く抱きしめられた。
その行動に、私は罪悪感すら感じた。
「…ごめんなさい。本当にごめんなさい」
ポタリ、と自然に瞳から涙が零れ落ちる。
「な、なに泣いてんだよ!?」
「だ、だってぇ…」
「それより、なんで待ち合わせ場所に来なかったんだ?まさか約束、忘れてたわけじゃねぇだろうな?」
「わ、忘れてなんかなかったけど…」
「けど?」
「は、隼人が……隼人が、もう私に愛想つかしたのかと思って…」
「はぁ!?」
「だって、私見ちゃったんだもん!昨日隼人が女の子とデートしてるのを!」
昨日、友達と街に買い物言ったとき、ファンシー系雑貨店で、隼人と女の子が一緒にいるのをたまたま見ちゃって……
だって、それって……
「…お前、バカだろ?」
「なっ…」
「これ」
隼人がどこからか小さな包みを取り出して、私に差し出した。
「…開けて、いいの?」
「…あぁ」
隼人からその包みを受け取って包装紙を取り除くと…中から出てきたのは箱。
その箱を開けてみると、中に入っていたのは……指輪だった。
「これ…!」
「…今日、丁度お前と付き合い始めて1年だから何かプレゼントしようと思って……でも何が良いかわからなかったから、その……たまたま会ったハルのヤツに選んでもらって…」
「ハルちゃんに!?」
…私は必死で昨日のことを思い巡らしてみた。
昨日は気が動転しててしっかり考えなかったけど……今思うとハルちゃん…だったかもしれない……
いや、あれは……ハルちゃんだった。
「…まさか…俺がお前以外のヤツとデートしてるのかとでも思ったのか?」
隼人が呆れて聞いてくるけど、事実なので私は俯いて、コクリと頷いた。
すると隼人ははぁ、と溜息をついて…また、私を抱き寄せた。
「バカ野郎……俺が好きなのはお前だけだ」
「隼人…」
「俺、今日お前に会えるのを結構楽しみにしてたんだからな」
「……ごめん、隼人。私の勘違いでこんなに待たせちゃって…」
「全くな。だか…」
隼人が何か言いかけてたけど、私はお構いなしに…隼人の頬に、口付けた。
「な、おまっ……」
「私だって楽しみにしてたよ?だって……私だって隼人のこと、大好きだもん!」
そう言って、今度は私から隼人に思いっきり抱きついた。
午後22時の、回想
(とりあえず中入る?寒いでしょ?)
(あぁ……)
(今度の休みにデートの仕切り直し、しようね?)
(別に明日学校終わってからでもいいんじゃねぇの?)
(ふふ、それもそうだね!)
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