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□午前4時の、溜息
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「ん……痛っ」


ガン、と思い切り何かにぶつかって背中に痛みを覚えた。

辺りは真っ暗で、私は手探りで袂の携帯電話に手を伸ばした。


「……もう4時…?」


携帯電話を開くと、眩い光と共に03:51≠ニ表示された時間が目に飛び込んで来た。


「……はぁ、またボスに怒られちゃうなぁ」


小さくそう呟き、大きく溜息をついた。


「お、やっと起きたな」

「!?」


どこからか声が聞こえ、慌てて振り返ると……そこには相も変わらず笑顔を浮かべて佇んでいる山本の姿。

そこで、改めて今自分が置かれた状況を思い出した。


「ごめん、寝ちゃったみたいだわ」

「気にすんな」

「どう?出れそう?」

「ダメだ。状況は2時間前と何も変わんねぇ。応援が来るのを待つしかねぇな」

「そっかぁ……」


ここは敵地の倉庫の中。

今回の任務は山本とペア組んで敵地からある資料を取り戻してくることだったんだけど………

目的の資料は今手元にあるし、ある意味任務成功なんだけれど……うっかり罠に嵌って倉庫に閉じ込められてしまった、と言う訳。

しっかり確認したわけじゃないけど、多分この倉庫の前には敵のファミリーの人たちが武器を持って囲んでいるんだと思う。

敵の目的はわからないけど、とりあえず今は助かってる。

だからこそ、ここからふたりだけで脱出は不可能と考えて……今はボスたちが助けに来てくれるのをひたすら待っている。


「……ごめんね、山本。私のせいで」

「何度も言うけどお前のせいだけじゃねぇよ。だから気にすんな」


そう言ってポンポン、と頭を撫でてくれる山本。

今回、こんな状況になったのって私のせいなのに……山本は責めるどころか、大丈夫って言ってくれる。

それはそれで嬉しいし、気を張らなくていいんだけど……

……なんか山本にそういうことされるとすっごい恥ずかしい。


「ねぇ、山本。私たち大丈夫かな…?」

「ん……ま、大丈夫じゃね?ツナに応援頼んだしな」


そう言い笑顔を向ける山本。

こんな状況なのに……と、また大きく溜息をついた。

でも、そんな山本に助けられてるのもまた事実で……


「思ったんだけどさ…山本の時雨蒼燕流でなんとかならないの?」

「時雨蒼燕流?」

「うん。突破くらいは出来そうじゃないの?」

「まぁ、突破くらいは出来ると思うけど……時雨蒼燕流使ってると、もしお前に何かあっても護ってやれねぇだろ?」


だから応援が来てからな、と山本は続けた。


「や、山本っ!」


な、な、な……なんで山本はそんな台詞を真顔でさらっと言うんだ!

聞いてるこっちが恥ずかしくなるじゃん!


「なんだ?ってかお前顔赤くねぇ?大丈夫か?」

「だ、大丈夫。それは大丈夫だけど……」


そういった瞬間、袂の無線機が反応した。


「お、やっと応援か」

「そうみたい……じゃ、いきますか?」

「おぅ」


そう呟き、お互い任務のときと同じ顔つきになり、山本は刀を、私は愛用の銃を構えた。


「ここを出たらソッコーでツナたちのとこな」

「オッケー」


そう呟くと、山本の合図で私たちはこの倉庫の扉を破壊した。





午前4時の、溜息

(……で、なんでこんな状況になったのか説明してもらおうか?)
(……すみません、ボス)
(悪ぃな、ツナ)
(……はぁ。しょうがない……ふたりには帰ってあの書類片付けてもらうから)
(え、ボス…それだけは……!)
(これでも一応資料の奪還には成功してるから軽くしてるんだけど?この予想外の出来事にどんなに俺たちの予定が狂ったと思ってるの?)
(す、すみません……返す言葉もございません……)




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