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□午後15時の、安息
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「なに、しているのですか?」
ソファに座って本を読んでいると、いつのまにかやってきたバジルに声をかけられた。
「これ、読んでるの」
本を開いたまま、背表紙をバジルに見る。
そのタイトルを見たバジルは一瞬首をかしげる。
「…面白いですか?」
「面白いよ。バジルも何か読む?」
「拙者にも読めそうな本ありますか?」
「バジルの好みの本があるかはわからないけど…机の上に何冊かあるからそれならどれでも読んでいいよ」
机の上に詰まれた数冊の本を指差しながらそう言う。
それを見たバジルは私から離れ、机の方へ行き…1番上にあった本を手に取り、ぱらぱらと本を捲り始めた。
それを見た私はまた目線を本に戻した。
バジルは何冊か本を捲った後、読む本を決めたらしく向かいのソファに座って必死で本を読んでいた。
「んーっ面白かったぁ!」
本を読み終えた私はパタンと本を閉じ、机の上に置く。
するとその瞬間、時計がメロディを奏でた。
「この曲は…」
ここにある時計は長針が「12」を指したとき、曲が流れるようになっている。
24曲内蔵されていて0時〜23時、それぞれ違う曲が流れるように設定されているからこの曲は……
「えぇっ……もう15時なの!?」
本に夢中になっていて時間の流れなんて全く気にしてなかった…
一体何時間本を読んでいたんだろう…?
「15時か……紅茶淹れてお菓子でも食べようかな?」
ふとそう思い、キッチンに向かおうと立ち上がると…もう既に机の上に用意されていた。
ポット、カップ、紅茶、お菓子。
それら全部が見事に揃っていた。
「…バジル?」
私が15時に紅茶を飲みながら休憩するというのを知ってるのはバジルだけだから、バジルが用意してくれたとしか考えられない。
「そういえばバジルは……?」
向かいのソファに座っていたはずのバジルの姿はなかった。
「あれ?どこだろ…?」
隣の部屋を覗くと…バジルが本を持ったまま気持ち良さそうに眠っていた。
「バジル?寝てるのー?」
私がそっと近づくと、それを察知したかのようにバジルが目を覚ます。
「わわわ…ごめん、起こしちゃった?」
「あれ?拙者……眠ってしまったのですか?」
「そうみたいだね。つまらなかった?その本」
私はあんまり捲られていない本に視線をおとしながら、淡く微笑んで呟いた。
「いや、その……」
私の問いにバジルが少し慌てぎみに答える。
「それより、本は読み終わったのですか?」
「うん、一応ね」
「では、そろそろティータイムにでもしましょうか?」
「そうしましょ。もう15時だしね」
「え…もう15時なんですか!?」
「そうだよ」
ふふ、と軽く微笑んでそう言うと、思ったよりも寝すぎてしまった…とバジルが少し落胆する。
本に夢中になってバジルを放ってしまったのは私だから、少しだけ申し訳なく思う。
「早くティータイムにしましょ」
「そうですね。今日は拙者が紅茶を淹れますよ」
「そう?じゃあお願い……用意してくれてありがとね、バジル」
「いえ」
そんな話をしながら、私たちは隣の部屋に移動した。
「さ、紅茶をどうぞ」
「ありがと」
ふわりと笑顔を浮かべ、バジルからティーカップを受け取った。
午後15時の、安息
(ひとりで本を読むのもいいけど、ふたりでティータイムを嗜むのもいいよね)
(そうですね。でも拙者は本は苦手です)
(文字見てると眠くなるタイプ?)
(………)
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