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□午前2時の、抵抗
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「フランーいるー……?って、ここもハズレか」


はぁ、とその場でため息をついた。

フランに用事があるから、こうして広いお屋敷を捜しまわってるわけなんだけど…なかなか見つからない。


「もー…ほんとに何処に行ったのよ……」


今まで捜しに行った場所は全部ハズレだった。

だから、この資料室にはいると思ってたんだけどな……

資料室のドアを開けたけど、部屋の中は真っ暗で、とりあえず部屋の中を覗いてみようと電気のスイッチを手探りで探し始めた瞬間。


「誰ですかー」


首元に感じた、冷やりとした感覚。

ナイフを充てられてるのだと理解するのと同時に、首元に当てられていたナイフの感覚が消えた。


「なーんだ、センパイですかー」


背後からいつも通りの口調のフランの声が聞こえ、背後からフランの気配が消えたかと思うと、突然部屋の灯りがついた。

あまりにも突然のことに一瞬目が眩むが、それにもすぐに慣れ、目を開けると目の前にはフランの姿があった。


「ビックリしましたよー」

「それは私のセリフよ!なにもいきなりナイフを充てることないでしょ!」

「だって、誰が入って来たのかわからなかったんですよーだからとりあえずナイフで威嚇でもしておこうかと思いましてー」

「……ベルが私に押しつけた意味がわかったわ」


手を額に当て、小さな声で呟きながらため息をついた。

だからベルは私にこれを押しつけたのだと自己納得する。


「そういえば、なにか用事だったんですかー?」

「フラン、あなた任務の資料取りに行った?」

「あーすっかり忘れてましたー」


ポン、と手を叩きいかにも今思い出したかのように言うけど…これは絶対確信犯だわ。


「そうだと思ったから持って来たわよ。はい」


手に持っていた資料…数枚の紙の束をフランに手渡しする。


「おーありがとうございますー」


フランは資料を受け取るとパラパラと捲り内容を確認していた。

フランにこの資料を渡したということは私の役目はもう終わり。

だから部屋に戻ろうと資料室を出ようとドアに手をかけた瞬間。


「そういえばなんでセンパイがこれをー?」

「ベルに押しつけられたのよ」

「……ベルセンパイに?」

「元々スクアーロがベルに頼んだらしいんだけどね。でもベルが私に押しつけた意味がわかったわ」

「……ってことはセンパイ、こんな遅くまでベルセンパイと一緒にいたんですか?」

「え?あ、うん。さっきまで一緒に談話室にいた、けど……」


私がそう言った瞬間、フランの雰囲気が変わるのが分かった。

え、なんで……なんでフランは怒ってるの?

私、なにかフランを怒らせるようなこと言った?


「…もう2時ですよ?」

「そう、ね…でも私もベルも明日オフだし……」

「そういう問題じゃないです」


フランの雰囲気に圧倒され少し後退りする私。

それでもフランとの距離は変わらず、あっという間に背中が壁についた。

目の前を紙の束が舞い、気づくとフランの両手は私の顔の横にあった。

私の真後ろにつかれた手はまるで私を逃がさないかのようで。


「フ、ラン…?」

「……」

「私、なにか、した……?」

「ミーは、センパイがこんな夜中にあの堕王子と一緒にいたことに怒ってるんですー」

「……え」


フランの言ってることが理解できない。

どういうことなのかと必死で考えていると、目の前でフランが思いっきりため息ををついた。

失礼な、って言おうとした瞬間……突然フランの顔が近付いてきたと思ったら、口づけられて……


「え、フラ…」

「こーゆー意味ですー。ここまですればいくら鈍いセンパイでも理解できますよねー?」


ニヤリ、とフランが笑みを浮かべる一方で、私は顔が赤く染まるのが分かった。


「フランの……」

「…センパイー?」

「フランの、バカーっ」


ドン、と目の前にいたフランを思い切り突き飛ばし、資料室を出てまっすぐ部屋まで全力疾走した。

俯いて資料室を飛び出した私は、フランがどんな表情をしていたか知るはずもない。





午前2時の、抵抗

(明日どんな顔でフランに会おう……)
(明日どんな顔でセンパイに会いましょうか……)
((会いづらいなー……))





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