夜空の虹霓

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「なぁ、燐。ナイト・レインボーって知ってるか?」

「ナイト・レインボーって……夜の虹?夜に虹が出ることなんてあるの?」

「あるらしいんだ。でな、ナイト・レインボーって滅多に見られるものじゃなくて……見た人には最高の祝福が訪れるんだってさ」

「へぇ…ロマンチックだね」

「……燐。いつか一緒に見に行かないか?ナイト・レインボー」

「見に行かないか?って……そう簡単に見れるものなの?」

「わかんねぇ……でもやってみる価値はありそうじゃねぇ?」

「そうだね……じゃあ、約束」

「あぁ、約束な」


……そんな約束をしたのは、まだ私たちが幸せに笑っていた頃。





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「……ちぃちゃん。おはよ」


殆ど誰も知りあいのいないこの学校で唯一の知り合いが、フェンスの向こうでボール籠を運んでいたので、おもわず声をかけた。

「あ、燐ちゃん!おはよ!迷わず来れた?」


声をかけた相手……ちぃちゃんこと不二千紗都ちゃんはボール籠を持ったまま、フェンス越しの私にニッコリと笑いかけながらそう言う。

そして、今私が立っている辺りに駆けて来てくれた。


「んと……とりあえず学校に来るまでに3回くらいで、ここに来るまで2回くらい迷った……かも」

「あはは……お疲れ様」

「氷帝って相変わらず広いね」

「そうなんだよね……無駄に広いんだよ」

「無駄って……「千紗都!」


ふたりで軽く笑いながらそのんびりとそんなことを話していると、ひとりのテニス部員がちぃちゃんの名前を呼んだ。


「ちょっと待って!今行く!……ごめんね、燐ちゃん。また後でね!」

「うん、また後で」


そう言うと、ちぃちゃんボール籠をその場に置いて、呼ばれた人の方に慌てて駆けて行った。

私は…ここにいても仕方ないので、とりあえず新しいクラスに行こうと振り向いた。


「…………」


振り向いたまでは良かったんだけど………失敗した。

せめて玄関の場所をちぃちゃんに聞いておくんだった。

ここまで来るのにだって、2回くらい迷ってやっと辿り着いたんだもん。

1回来ただけじゃこの広い敷地の何処に玄関があるかなんか覚えてない。


……そう、私は今日の新学期からこの氷帝学園の高等部に編入する。

元いた学校がイヤだったんじゃない。

むしろ私はあの場所が、仲間たちが凄く好きだった。

でも、私は……


「とりあえず向こうの方に行ってみようかな」


私はとりあえずくるり、と右方向を向いた。

…その瞬間。


「!!」


ドン、と……テニスウェアを着た誰かの肩にぶつかってしまった。


「ご、ごめんなさい!」

「…あぁ……」


慌てて謝ってから、人がたくさんいそうな場所を目指して歩いた。

まさか、この出会いが私の運命を変えるとも知らずに……


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