夜空の虹霓
□Iris03 仕事
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……すみません、無理です。
レギュラーだけとはいえ……名前くらい聞いたことあるとはいえ……今すぐ顔と名前を一致させろなんて無理です!
確かに全員、見たことあるけど…名前も聞いたことあるけど……跡部くんしか一致しません!
Iris03 仕事
「よろしくお願いします」って言ったときのみんなの表情を良く覚えてる。
あんまり期待していないような瞳、またか…というような表情。
これを見て良くわかった……ここのみんなはちぃちゃん以外をマネージャーだとは思わないんだ。
とりあえず部員ふたりに仕事場まで案内してもらい、基本的な仕事の説明をしてもらうことにした。
そして、仕事場に一歩踏み入れた瞬間……目の前の光景に唖然とした。
そこにあったのは最新モデルの大きな洗濯機と食器乾燥機と大きな冷蔵庫。
人数が半端ないからかもしれないけれど、普通の部室にはない備品の数々にただ唖然とするばかりだった。
でもこれを使えばドリンクボトルを洗ったりするのなんて容易だろし、ドリンクを冷やしたりするのには困らない。
半端ない数のタオルだってそんなに手間をかけずに洗うことが出来ると思う。
ドリンクをつくるために必要な機器もバッチリ揃ってるし……ドリンク関係でなく、マネージャーとしての仕事をこなす為に必要な備品は全部揃ってる。
「……すっごーい!」
一通り見回したところで、私はそう口にした。
あとで聞いた話なんだけど…この時の私はこのふたりが思いっきり引くほど瞳を輝かせていたらしい。
「……こんなに設備が良いのに誰もしっかり仕事をこなさないの?」
「はい。だからこれはもう千紗先輩のためにあるようなものなんです……この機器は全部千紗先輩と跡部部長がふたりで買い揃えてきたものなんです」
……最初、最低限部員全員ののドリンクとタオルだけは用意しろって跡部くんは言ってたけど……楽勝じゃん。
それどころかおつりが来るよ。
ちぃちゃんは毎回レギュラーメンバーの練習を見て、アドバイスとかしてるって言ってた。
それは私には出来ないけど……掃除とか、私に出来る最低限のことはしよう。
案内してくれたふたりには「大丈夫」と告げて、早速洗濯機を起動させて、ドリンクボトルを全部食器乾燥機の中に放り込んだ。
最初はそれだけで大丈夫なのかなー?って思ってたんだけど、隅々までキレイに洗浄し、完璧に乾燥まで行ってくれた。
……流石最新モデル。
ドリンクは青学で作ってたのと同じように作れば大丈夫だよね?
ちぃちゃんと一緒に一番おいしい味になるように調合を研究したものだから、多分味は大丈夫なはずだし……
そう思いながらもとりあずドリンクを作り、全部冷蔵庫に詰め込んだ。
しかし……本当に大きい冷蔵庫だ。
ドリンクボトルを200個以上入れたっていうのにまだ余裕がある。
まだ時間はあるし、本当はここで部室の掃除とかすれば良いんだと思うんだけど……準・平専用ならともかくレギュラー専用の部室は許可を貰わなきゃ無理だよね……
マネージャー用の部室を掃除してもな……って思ったから、とりあえずこの仕事場を隅々までキレイにすることにした。
幸い掃除道具も揃ってるしね。
そんなに広くない仕事場のせいか、あんまり時間はかからずに出来た。
他に……と思考をめぐらせていると、(マネージャー専用の)部室の机の上に確か部誌があったことを思い出した。
部室に取りに行き、この仕事場に戻ってきて書き始めた瞬間……扉が開いた。
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