夜空の虹霓

□Iris04 指輪
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ふと空を見上げると、雲ひとつない青空が広がっていた。

もう大分暖かくなり、今日もいつも通り朝練習が行われていた。

いつもと変わらない日常に風景。

今日も、いつもと変わらない日になるのだと思っていた。

少なくても、この時は。





Iris04 指輪





「お疲れ様。ドリンクどう?宍戸くん、長太郎くん」

「ありがとうございます、燐先輩」

「サンキュー」


私がここのマネージャーになって早1ヶ月。

もうすっかり部員全員の名前も覚えて、ちゃんと仕事もこなせるようになった。

そしてわかったことがひとつ。

最初のちぃちゃんの無茶苦茶な紹介説明はあながち間違っていない、ということだ。


「はい、景ちゃん。お疲れさん」

「……なんだ、千紗都か」

「………悪かったわね、燐ちゃんじゃなくて。あーもー…景ちゃんの分はなし!」

「おま…っ。さっさとよこせ!」

「しょうがないなー……わかったわよ。はい」

「危ね…っ。千紗都、投げるな!危ねぇだろ!?」

「さっさとよこせって言ったのは景ちゃんでしょ!?」

「千紗都ー俺にもドリ……投げへんでくれ!危ないやろ?」

「そんなの知らない!」

「……いつもちぃちゃんのまわりは賑やかだね」


目の前で繰り広げられている光景に、思わず笑みを零した。

隣では同じく長太郎くんが軽く笑みを零していて、宍戸くんが少し呆れ気味に呟いた。


「…千紗都のヤツも少しは燐を見習えば良いのにな」

「亮ちゃん!何か言った!?」


キッとちぃちゃんが宍戸くんを睨む。


「地獄耳かよ……」


はぁ、とため息をつきながら宍戸くんがさっきよりも小さい声で呟いた。

その光景に、私は長太郎くんと顔を見合わせながら淡く微笑んだ。

私も、もうこの氷帝テニス部にいることに抵抗もなくなったし、この場所にいたいって強く望むようにもなった。

……って…こんな事言ったら怒られちゃうかな?


ねぇ、朔耶。私は今、ここにいるんだよ…?

そう思うとなんか哀しくなっちゃうけど……

ふいにそんなことを思い、おもむろに左手の薬指のシルバーリングを握り締めた。


「燐先輩は本当にそのシルバーリングを大切にしているんですね」

「え?」


まだちぃちゃんたちが言い合いをしてる中、長太郎くんがそう呟いた。


「毎日欠かさずにつけているし……誰か大切な人からの贈り物ですか?」

「……うん。私の最愛の人からの贈り物なの」

「へぇ…そうなんですね」


これは最愛の人からの最後で……最期のプレゼント。

だから……絶対に一時も離さない。

じゃないと、朔耶が凄く遠いみたいで………

そんなことを思っていると、いつの間にか現れた榊先生によって朝部活の終わりを告げられた。


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