夜空の虹霓
□Iris06 暗涙
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[千紗都視点]
「千紗都!」
バタバタバタ、と大勢が廊下をかけてくる音と同時に聞こえた、自分の名前を呼ぶ声。
慌てて顔をあげると、青学のレギュラーのみんなが慌てて病室に向かって駆けて来ていた。
それを見た私は、座っていた燐ちゃんの病室の前の長椅子から立ち上がり、周助の傍に駆け寄った。
Iris06 暗涙
-前半は千紗都視点、後半は燐視点-
「早かったね、周助」
「みんな全速力でここまで来たからね」
周助は、乱れた息を整えながらそう言う。
そっか…と力なく笑う私に、周助は少しだけいつもの笑みを崩す。
「…燐は?」
「…大丈夫、だって。ただ……目を覚まさないの」
そう不安そうに言う私の頭に周助が軽く手を置く。
「千紗都がそんなに不安そうな顔をしていたら燐が目を覚ましたときに余計な心配させるよ」
だからそんなに不安そうな顔をしないの、と周助はいつもと同じ表情で諭すように呟く。
「そう、ね」
燐ちゃんのためにも不安そうな顔はやめよう。
そう思いながら、青学のみんなと一緒に燐ちゃんの病室に足を踏み入れた。
「…氷帝?」
そう、最初に呟いたのは手塚くんだ。
病室には、心配そうな表情を浮かべている氷帝のみんながいて、青学のみんなは多少なりとも驚いているみたいで。
「あれ?言ってなかったっけ……燐、今は氷帝でマネージャーやってるんだよ」
周助がそういった瞬間、青学のみんなの表情が一瞬曇った。
だけど次の瞬間。
「ん……っ」
燐ちゃんが微かに呟いたのを聞き、みんなでベッドを囲むようにして燐ちゃんを覗き込んだ。
「燐、ちゃん……?」
「だ、れ……?ちぃ、ちゃん?……周?国ちゃん……」
「良かった……燐っ!」
そう言いながら、ギュっと周助が思い切り燐ちゃんを抱きしめた。
軽く頭に手を添えて、淡く微笑んで燐ちゃんの頭を撫でてるのは手塚くんだ。
「みんな、来てくれたんだ……ありがとう」
「なーに言ってるの!燐が倒れたって聞いて飛んでこないわけないでしょ?」
「ふふ、ありがとう。英ちゃん」
「心配したぞ」
「ごめんね、心配かけて」
燐ちゃんが淡く微笑む。
氷帝のみんなが目に入ってないってことはないんだと思うんだけど……やっぱり、ずっと一緒にいた青学のみんなの方が安心するのかな?
なんとなくこの雰囲気を感じたんだろう……氷帝のみんなは一歩退いてことの成り行きを見守ってた。
「…アイツらも来たようだし、俺たちは外に出てるか」
景ちゃんがポツリとそう呟き、みんなは軽く頷き病室の外に出た。
あの雰囲気の中に私までいたらいけないだろうな、と思った私もみんなと一緒に病室の外に出た。
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