夜空の虹霓
□Iris08 約定
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「そろそろのはずなんだけど…」
手元の時計を見ながらそう呟くちぃちゃん。
約束の時間の15分前、校門でお出迎えするために立っていると、視界に見たことのあるバスが映った。
「来たみたいだよ、ちぃちゃん」
時間ピッタリ、と呟くちぃちゃんと共に、バスが停車するであろう場所へと移動した。
Iris08 約定
「千紗っ!」
「久しぶり、雪」
真っ先にバスを降りた少女が、まっすぐにちぃちゃんの元へ向かい、声をかける。
「今日はよろしくね」
「こちらこそ」
互いに笑顔で握手をするふたり。
その光景をぼんやりと眺めていると、ふと彼女と視線が合った
「……燐?」
私の顔を見て不思議そうに目をパチパチさせる彼女に、私は笑みを向ける。
「久しぶりだね、せっちゃん」
「久しぶりーっ」
そう言いながら、思いきり私に抱きついたせっちゃんの思いもよらない行動に、一瞬吃驚してしまった。
「雪雫、燐が困っているよ」
そんな状況を見てか、不意にとんできた柔らかな声。
「あ、ごめんね!というかどうして燐がここに……」
そう問いかけた瞬間、せっちゃんの襟首が思い切り掴まれる。
「雪雫、先にする仕事あるよね?」
「……精市…」
ニッコリと笑ってそういう彼に対し、せっちゃんは睨むような視線を送るが、やがてせっちゃんは諦めた様にバスの方へと駆けて行った。
「久しぶりだね、燐」
「久しぶり……精ちゃん」
ポンと頭の上に乗せられた手が、懐かしい。
そんなことを思っていると向こうの方から跡部くんたちがやってきて、精ちゃんは跡部くんの方へと体を向けた。
「よく来たな、幸村」
「今日は世話になるよ、跡部」
そう言葉を交わすと、精ちゃんをはじめとした立海のみんなはテニスコートの方へと移動しはじめた。
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