紅涙の欠片

□Piece02 秘めたる過去
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リンとミナと一緒に新しい教室に入ると、黒板に自分の名簿番号(らしき数字)が書かれていた。

どうやらこれが最初の座席らしい。

自分の番号を見つけ、隣は誰かなー?なんて思いながら席に着き、隣を見た瞬間…私は目を見開いた。





Piece02 秘めたる過去





「山本、くん…?」

「橘川……?」


隣の席に座っていたのは山本くんで。


「久しぶり、だね」

「おぅ、久しぶり」


私がそう言うと、山本くん笑顔でそう答えてくれた。


「あの時はわざわざ…ありがとね」


昨年の夏頃、偶然出会った私たち。

あの日山本くんに渡したタッパーは、数日後にたくさんの飴と共に私の手元に戻ってきた。

お礼を言いたかったんだけど、普段接点がない私たちが話をする機会なんて皆無で、今だにお礼すら言えない状態だった。


「俺こそ、あの時はありがとな。あの檸檬の砂糖漬けめちゃくちゃ美味かったぜ」

「ありがと。でも、あとで気付いたんだけど檸檬って砂糖漬けよりも蜂蜜漬けの方が美味しいんだよね?ごめんね……なんか中途半端なものあげちゃって」


……あのあと帰って本を読んでいて初めて気付いたんだけど……檸檬って砂糖で漬けるよりも蜂蜜で漬ける方が美味しくできるみたいで。

まぁ、両方で漬けると更に美味しくなるような気もするけど。

そんなことを思っていると、山本くんは隣で「そうか?砂糖漬けでも十分美味かったぜ?」と言ってくれた。

そんな調子で山本くんとほのぼのと話していると、向こうの方から見知ったふたりがやって来た。


「おはよう、山本。……あれ、柚稀?」

「おはよう、ツナ」

「おはよう、柚稀。山本と席、隣なんだ。クラスが一緒なのは掲示板で見てたから知ってたけど」

「ふふ、凄い偶然でしょ?」


みんなと同じクラスになれたのも凄い偶然だけどね、とニッコリと微笑んでそう言うと、ツナもそうだねと呟く。


「そうだ…柚稀、今日のことなんだけどさ……」

「うん…どうかした?」

「いや、今日柚稀の家に行くって言ったらランボたちも行きたいって騒いでさ…夕方でいいから連れて行ってもいい?」


ツナが少し困ったようにそう言う。

私はその情景が脳裏に浮かび、思わず苦笑してしまった。


「勿論、大歓迎だよ」

「母さんが夕飯は一緒に食べたらどうか、って言ってたから夕飯は家で食べて、その後遊ばない?」

「賛成っ!」

「獄寺くんも一緒にどうかな?」

「是非ご一緒させてください!」


私たちがそう話していると、不思議そうな表情をした山本くんがツナに話しかけた。


「ツナと獄寺と橘川って知り合いなのか?」

「柚稀とは幼馴染みたいなものなんだ。ね、柚稀」

「うん。一応幼馴染、だね」


私たちはずっと昔から一緒にいるってわけじゃないけど、幼馴染って言ってもいいんだよね?


「今日、遊びに行くのか?」

「遊びに、っていうか…柚稀の家に行って遊ぶ、っていう方が正しいかな?」

「じゃあさ…今日、俺も一緒に行ってもいいか?」


山本くんがふとそう尋ねるように呟く。

そのひとことに私は勿論、ツナや隼人も一瞬目を丸くした。

隼人は散々文句を言ったけど、結局ツナのひとことでしぶしぶ頷き、丁度そこで担任の先生が教室に入ってきて、ツナと隼人は各々の席に戻って行った。


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