紅涙の欠片

□Piece06 未来を覆う翳
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この出来事が、未来を大きく左右することになるなんて思わなかった。

この日常が、いつまでも続くと思ってた。

いつまでも…みんなの傍にいられると思っていたのに……

運命は思ったよりも残酷だ。





Piece06 未来を覆う翳





「……どう、かな?」

「うん、いいと思うよ」

「ほんとに?良かったぁー」


お昼休みの応接室。

私は昨日の約束通り恭弥にお弁当を作って持ってきた。


「みんなに感想聞けなかったからちょと不安だったんだよねー」


呟くように言った私の言葉に、恭弥素早く反応し、ちょっと険しい表情になり私の方を振り向く。


「それ、どういうこと?」

「それって?」

「だから、感想聞けなかったって……」

「お弁当のおかず作りすぎちゃったから、みんなにも作ってあげたんだ。それがどうかした?」

「…………別に」


私がそう言うと、恭弥は拗ねたようにそっぽを向いてしまった。

私……何か余計なこと言ったかな?

ふと時計を見ると、あと5分弱で授業始まるところで。


「じゃあそろそろ教室戻るね」


授業に遅刻したら大変、と思いながらソファから立ち上がり、扉の方へ向かおうとした瞬間……急に恭弥に手首を掴まれた。


「恭弥…?ちょっと……離して?」

「………」

「恭弥ー授業始まっちゃうよー」

「………」


いくら私が話しかけても何も言わない恭弥。

そんなことしているうちにあっという間に時間が過ぎて……5限目の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。


「ちょっ…チャイム鳴っちゃった……次あの厳しい先生の数学なのに…」


はぁ、と溜息を漏らすと、すかさず恭弥が手を離して呟いた。


「先生にはあとで僕が言っておいてあげるよ。折角だからあと1時間ここでゆっくりしていきなよ」

「……うん」


授業始まっちゃったし、行く宛てもなかった私は恭弥の言葉に甘えてそのまま応接室にいさせてもらうことにした。

ぼーっとソファに座っていると恭弥がどこからかあるものを取り出してきて私の目の前に置いた。


「……え?これは…?」


目の前には美味しそうなケーキ……


「お弁当のお礼だよ」


恭弥は私とは目を合わさずにそう告げた。


「わぁっ…ありがとー恭弥」


私が笑顔でお礼を言うと…恭弥は心なしか微笑った……?…と思ったけどまたいつもの表情に戻ってしまった。

今の…私の見間違いだったのかな…?


「またお弁当作るねー」


私はケーキを頬張りながら恭弥にそう言った。


「楽しみにしてるよ」


そして、恭弥は聞こえるか聞こえないか程度に呟いた。



「ありがとう、柚稀」



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