紅涙の欠片
□Piece08 理不尽な二択
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「ここは……?」
重い頭をさすりながら、体を起こす。
確か私は校門に居たはず……
でも、今目の前に広がるのは一面の白い壁。
記憶の糸を手繰ってみると…なんとなく、思い出してきた。
そうか!私は……誘拐、されたんだ………
Piece08 理不尽な二択
「おや、目が覚めましたか?」
私が必死に記憶を辿っていると、部屋に黒スーツの男が入って来た。
その後ろには同じく黒スーツの男が3人付き従っていて、隙を見つけて逃げようかとも試みたけど……隙が、見当たらない。
「……あなた、は?」
警戒しながらも、一番前にいる…一番偉そうな男に話しかける。
「そうですね…テトラ、とだけ言っておきましょうか」
「…私を誘拐したのはあなた?」
私は、テトラと名乗った男を睨みながら呟く。
「誘拐なんて人聞きの悪い……ここに連れて来ただけ、ですよ」
「本人の同意がないんだから誘拐でしょ?」
私がそう答えると、彼は怪しく微笑む。
その表情に私が顔を歪ませると、テトラが口を開いた。
「実はあなたにお話があり、ここまで来ていただきました。聞いて…いただけますよね?」
彼の言葉に、背筋がゾクリとする。
多分、ここで「イヤだ」といったら命は保障できないだろう。
この身のこなし、雰囲気……
間違いない。彼等はリボーンちゃんと同じ…マフィア関連の人たちだ。
「聞き、ます…」
そう答えながらも、自分の声が震えているのがわかる。
この威圧感…只者じゃない。
「では早速。橘川柚稀さん。あなた、両親の仇を討ちたいとは思いませんか?」
「!!!」
両親の、仇……?
まさかこんなとこでこんな話を聞くなんて……思ってもみなかった。
「な、んで両親のことを……?」
「…知りたいですか?」
「それは……もち、ろん…」
「そうですか…では申し上げましょう。あなたの両親は、我がチェレスタファミリーのヒットマンだったのですよ」
「……え…」
私の両親が…ヒットマン!?
マフィアに関係が……あったんだ……
しかし、私の思考をお構いなしに話は続く。
「しかし、任務中にあるファミリーの者に殺害されましてね…」
「……何が、言いたいんですか?」
「柚稀さん、我々に手を貸す気はありませんか?」
「!?」
「聞いたところ、あなたの銃の腕前は一流ヒットマン並だとか…どうです?憎き両親の仇を討とうとは思いませんか?」
「私が…一流ヒットマン並の銃の腕前を持つ…?何かの間違いでは?」
だって、今まで銃なんて…
それにリボーンちゃんだって今までそんなことひとことも……
「いいえ、間違いではありませんよ。あなたは一流ヒットマン並の銃の腕前をお持ちのはずです。どうやら記憶を失っているようですね」
「!!!」
確かに、私には5歳までと9〜12歳のときの記憶がない。
でも…一体その空白の間に何かあったっていうの!?
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