紅涙の欠片

□Piece09 残された時間
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ねぇ、あなたはどうしてそんなに優しいの?

私は、あなたを…あなたたちを裏切ろうとしてるんだよ?

私は…どうしたらいいのかな?


残された時間は、あと僅か。





Piece09 残された時間





「ん…」


ゆっくり目を開けると、今度は目の前に広がる光景に見覚えがあった。

ここは……


「私の…部屋?」

「お、ようやく目が覚めたか?」

「リボーン…ちゃん?」


私のベッドの隣には、いつもと変らないリボーンちゃんがたたずんでいた。


「大丈夫か?」

「私…わた、し……」


脳裏に、昨日の記憶が蘇る。

そうか、私……

慌てて身体を起こすと、頭に激痛が走った。


「っ…」

「まだ寝ていたほうがいいよ」


ガチャっと扉が開き…部屋に誰かが入ってきた。


「……恭、弥…?」

「大丈夫?柚稀」

「あ、うん……」


そういえば昨日、堕ちていくときに恭弥を見た気がするんだけど…

そんなことを思っているとリボーンちゃんが口を開いた。


「昨日柚稀を助けたのは雲雀だぞ」

「…え?」

「ビルの最上階から落ちたお前をギリギリ受け止めたそうだ」

「え…嘘っ!恭弥、怪我ない!?」

「…僕よりまず自分の心配をしなよ。僕は大丈夫だから」

「そっか…良かった」


ほっと一息つくと、それを聞いた恭弥がひとこと呟いた。


「全く……柚稀らしいね」

「恭弥、ありがとう。本当に…あり、がとう」


私は何度も…「ありがとう」と、呟いた。

そして、気付くと…瞳から、涙が零れていた。

あの時の、あの堕ちゆく感覚……あのままだったら絶対…助からなかった。

それくらい…私でもわかる。

だから恭弥がもし来てくれなかったら…と思うと、ゾッとした。


「ちなみに柚稀をここまで運んだのはアイツらだぞ?」

「アイツら?」

「そう、アイツらだ」


そういいながら、リボーンちゃんは私の部屋の扉を開けた。

するとそこには、床に横たわって眠っているツナと、隼人と武の姿があった。


「ツナ…隼人…武……」

「明け方までは起きていたんだが…耐えられず寝ちまった」

「そう…」


それを聞いて、胸が締め付けられた。

私…一体何やってるんだろう。

みんなに迷惑かけて……本当に、情けない。

全ては、私の心弱さが原因なのに。


「ねぇ、柚稀。心当たりはないの?」

「心、当たり?」

「覚えてねぇのか?お前、誘拐されただろ?」

「そっか………ごめ、ん……何も」

「…そうか」

「………」


それを聞いたリボーンちゃんは深く帽子をかぶり直した。

……多分、ふたりは私が本当のことを言っていないことに、気づいてる。

でも……それでも何も聞いてこない。

その事実に、胸が苦しくなる。

けれど……言えない。今は、何も。


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