紅涙の欠片

□Piece12 隠された陰謀
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「…ごめんなさい」


ギュッ…と目を瞑って引き金を引いた。

……次の瞬間。

私の撃った弾はツナの髪を少し掠り、後ろの電柱にベチャッっという音と共に弾けた。





Piece12 隠された陰謀





「!?」


電柱を見ると、一部だけがこの暗闇の中で光り輝いていた。

そして、ツナの髪もほんの少しだけ光っていた。


「蛍光、塗料……?まさかこれっ…」

「あぁ、ペイント弾だ」

「……リボーンちゃん…?」

「柚稀は俺が銃を目の前に、そのままにしておくとでも思ったのか?」

「!!」


……今改めて考えると…そんなこと、あるわけないじゃない。

リボーンちゃんが、本物の銃をそのまま置いておくなんてこと……有り得ない。

どうして、そんなことに気がつかなかったんだろう?


「……やっぱり、無理だったね」


私は俯いて、持っていた銃を手放した。

カシャン……と音をたてて、銃が落下する。

同時に、そのまま後ろを振り返って走りだそうとした瞬間。

……なにかが、風を斬った。

慌てて振り返ると……恭弥のトンファーが私の髪を……髪留めを掠めた。


「……っ」


私は受け身をとって数歩退がったけれど……大切な髪留めが、舞い落ちた。

しかも……運悪く、恭弥の目の前にだ。


「(仕方ない……髪留めは諦めよう)」


……次の瞬間。

動き出そうとした私の手を、恭弥が掴んだ。

私が考えてた一瞬の隙に、恭弥が素早く反応したんだろう。


「……離して?」

「離さない。絶対に」


恭弥があまりにも強く握りしめているから……振りほどけない。


「お願いっ」

「このまま手を離したら、柚稀はどこか遠くに行ってしまうんだろ?だったら…意地でも離さない」


……真剣な、真っ直ぐな瞳。

私は……そんな瞳に弱い。

どうすればいいのか……思考は追いつかなかったけど、自然に身体が動いた。


「私の部屋、机の上」


恭弥の耳元でそっと、そう呟いた。

そして、そのまま頬に……口付けた。


「なっ…」


恭弥が怯んだ、その一瞬の隙をついて、私は恭弥の手を振りほどいた。

そして、近くにあったものを使って塀の上に登った。

立ち上がって、もう一度だけ後ろを振り返った。

髪留めを失い、ほどけた私の長い髪がふわりと宙を舞う。

目に飛び込んできたのは、唖然としているツナと隼人と武と、なんともいえない表情をしてる恭弥とリボーンちゃんの姿で。

それぞれの表情が、脳裏に焼き付いた。


「……Scusa…Arrivederci」


それだけ呟くと、屋根伝いにこの場から離れた。


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