紅涙の欠片

□Piece14 風舞姫の由縁
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風を舞うきみは美しくて、あっという間に魅入られる。 

その鮮やかな闘い方に、何人の人が魅入られただろう?

きみが宙を舞うのに重過ぎるなら……取り除いてしまおう。 

余計なものを、全て。

 



Piece14 風舞姫の由縁





《雲雀視点》


「乗れ!」


赤ん坊たちと柚稀の家に行こうとしていると、路地を抜けたところに1台の車が止まっていて、金髪の男がそう言い放った。

その声の主を聞いた赤ん坊たちは、早々と車に乗り込んだ。


「ヒバリ、お前も乗早く乗れ!」

「でも、その前に柚稀の部屋に行かなきゃならない」

「そういえばさっき柚稀のヤツ…何て言ったんだ?」

「ただ『私の部屋、机の上』……と」

「それなら柚稀の部屋まで行く必要はねぇよ」


そういうと、その金髪の男は3つの封筒を取り出した。


「悪いとは思ったが柚稀の部屋の机の上からコレを持ってきた」


金髪の男のその言葉に、柚稀を探すのには従った方が早い……そう思った僕は素直に従うことにした。


「これは…お前のだ」


そういって、1枚の封筒を手渡された。

その表には『恭弥へ』と、見慣れた字で書いてあった。

1つは赤ん坊、そしてもう1つは沢田綱吉たちに宛てられたものだったらしい。

それを受け取ると、すぐさま封を開けた。

すると中からは1枚の便箋が出てきた。


「……柚稀」


『恭弥へ』から始まった手紙。

内容は殆ど僕に謝ってばかりのものだった。

そして最後は『Scusa、Grazie di tutto……Arrivederci』と書き記されていた。


「…あの時柚稀が口にした言葉と同じ……?」


恐らくこれはイタリア語。

読めても……意味までは理解できない。

そう思っていると、後ろに座っている獄寺隼人たちがなにやら言い出した。


「ねぇ獄寺くん」

「なんですか?10代目」

「最後…なんて書いてあるかわかる?」

「Scusa、Grazie di tutto……Arrivederci…………要約すると『ごめんなさい』『ありがとう』……『さよなら』…でしょうか?」


…それじゃあ柚稀はあの時ごめんなさい、さよなら…って言ったの?

初めからこのつもりで……?

そんな風に思っていると、赤ん坊がひとこと付け加えた。


「…獄寺、それは『さよなら』じゃねぇぞ……『また会いましょ』って意味に取るんだ」

「リボーンさん…?」

「…そうだろ?」

「そうですね」


…赤ん坊の言う通りだ。

さよなら、なんて認めない。

頼むから…もうこれ以上僕の前からいなくならないでくれ……


「それより…リボーン、これからどうする?」

「……せめて柚稀の行き先がわかってればな…」


赤ん坊がそう言う。

すると……ふと、頭に数時間前の柚稀との会話がよぎった。


―――私ね、もし死ぬなら海辺がいいな…って思ってるんだ。


「……海」

「海?」

「多分柚稀は海に行くはずだよ」

「どういうことだ?」

「言っていたんだ、柚稀が。もし死ぬなら海辺がいいって。だから……恐らく」

「ヒバリ…それは確かか?」

「わからない…でも闇雲に探すよりは……」

「そうだな。ロマーリオ!ここから一番近い海岸に向かってくれ」


…柚稀、きみはこのことをわかっていて僕に伝えようとしてたのかい?

だったら、どうして………


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