紅涙の欠片
□Piece16 命を伴う儀式
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「…リボーン」
「なんだ?」
「柚稀にコレを……渡してくれ」
柚稀の元へ駆けて行く寸前、リボーンに柚稀にとって大切なものを託した。
Piece16 命を伴う儀式
《ディーノ視点》
「……自分で渡せばいいじゃねぇか、ディーノ」
「俺よりもリボーンの方が渡すチャンスがありそうだろ?」
「……そうだな。必ず渡す。でも、渡したところで……」
「確かに今の柚稀にコイツを開花させられないかもしれねぇ。でも……賭けてもいいだろ?柚稀はコイツの使い手なんだから」
「…柚稀なら、か」
俺もリボーンも互いを見合わせて…ニヤリと笑った。
そして……先に行ったツナたちを追いかけて、柚稀の元に向かった。
柚稀の元に辿り着くと、テトラのヤツが俺たちと対峙するように立ちはだかった。
そして…それを見計らったのか、奴等は煙幕を辺りに投げ放った。
「ツナ、獄寺、山本!柚稀の傍から離れるなよ」
「あぁ!」
「はい!」
俺たちで、柚稀を護るように…柚稀を囲み立つ。
柚稀には……指一本触れさせはしない。
大切な、柚稀には。
「さて…彼女を渡してもらいましょうか」
「いやだ、と言ったら?」
「それなら力ずくで渡していただきましょう」
「させるか!」
一斉にこっちに目掛けてやってくる敵。
それに、各々が応戦した。
その隙に、リボーンは柚稀にアイツを渡す。
柚稀の武器である、扇を……
「あとはお前次第だ。ここは俺が何とかするから柚稀は避けてろ」と、リボーンが言うのが聞こえた。
それを聞いた柚稀は、その場から立ち上がって少し離れたけれど……さっきの怪我が影響しているのか、テトラの部下らしき奴等に囲まれた。
……振り下ろされた刀を、なんとかかわしたたみたいだけど…気が気じゃない。
柚稀の元へ、一刻も早く向かうために……俺は必死で目の前の奴等を倒した。
一方柚稀は、敵によってまた振り下ろされた刀を今度は扇で防いだ。
…あんな戦い方じゃ……
そう思った瞬間、俺は柚稀に向かって叫んでいた。
「柚稀!ソイツに……イノチを吹き込め!」
「……イノチを、吹き込む……?」
俺の言葉を少し考えた柚稀は、さっきよりもギュッと……鉄扇を握った。
……次の瞬間。
ぱぁ、と扇に光が……炎が灯った。
「…リボーン」
「あぁ、モノにしたな」
「流石、柚稀だ」
柚稀の手にある扇には……ツナと同じ、死ぬ気の炎が灯っていた。
ただ、ツナと違うのは……色が『無色透明』だということだ。
それを柚稀がわかっているのかはわからない。
けれど、敵が四方八方から刀が振り落とした瞬間、パッと扇を開き……相手に向かって一振りした。
次の瞬間、ゴォォォと風が渦巻き……目の前の相手をを次々と薙ぎ倒していった。
「…巻風か」
「……あぁ」
その光景に、柚稀だけでなく……俺もリボーンも一瞬気を緩めた。
けれど、その一瞬が命取りだった。
次の瞬間、どこからか煙幕が上がり……その煙幕が消える頃には、テトラと柚稀の姿がなくなっていた。
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