紅涙の欠片

□Piece17 蘇る真の記憶
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「…真っ白……」


目の前に広がるのは、一面真っ白な世界。

四方八方を見渡しても……白、白、白。

…だけど、ふと目に留まったのは…白の世界の『青と桃』。

勿論それに惹かれないわけなんかなくて……私の足は、自然にその『青と桃』に向かって行った。

近づくにつれ、それがなんだか解ってきた。





Piece17 蘇る真の記憶





「蓮の花……ねぇ」


『青』は湖で、『桃』は……湖に浮かぶ、蓮の花。

口元に軽く笑みを浮かべて、湖に浮かぶ蓮の花を見据えると、後方から聞き慣れた声が聞こえた。


「……柚稀」


この声音を、私が聞き違えるわけない。


「骸っ!」


ばっ、と真後ろに立っていた骸に抱きついた。


「どうしたんですか?柚稀」

「え?あ、いや……なんとなく。ごめん」

「どうして謝るんですか?謝る必要なんかありませんよ」


そう言って、骸は淡く微笑んだ。

……これで私とあまり年が変わらないなんて……なんか不思議。


「ねぇ骸、千種と犬は?」


ふと、周りにふたりの姿が見えないことに気付き、骸に問いかけた。


「ふたりは今、ここにはいませんよ」

「そっか。それより…ここはどこ?」


キョロキョロと、周りを見渡す。

何もない、真っ白な世界なこの場所を、私は知らない。

見たことも、聞いたこともないから……


「ここですか?ここは……」


そう言いかけたところで、骸が言葉を濁した。

それって………言えないってこと?


「……骸?」

「柚稀、僕のことをどう思ってます?」


…急に骸が話を変えた?

その事実にちょっと吃驚しながらも、骸の問いに答えた。


「どうって……大好きだよ?」

「千種と犬はのことは?」

「勿論大好き。それがどうかした?」


頭に疑問符を浮かべながら、骸に問いかける。

……今日の骸、ちょっと変……

なんていうか…いつもと違う。

なんか……私に隠し事でもあるのかな?


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