紅涙の欠片
□Piece19 心の奥の本音
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パン、と弓から矢を放つ音がする。
一本集中……そう自分に言い聞かせながら矢を放った。
「あっ…」
一瞬不安になるけど……矢はちゃんと、的の真ん中を射た。
振り向くとみんなが笑顔を向けてくれて……その笑顔に、私もつられるように笑顔を向けた。
Piece19 心の奥の本音
「…ごめんね、柚稀」
「いいって。気にしない、気にしない」
私は難なく勝てたけど、これは団体戦。
惜しくも……勝ち上がることは出来なかった。
少し悔しいな、とは思うけど……多分私なんかよりみんなのがもっと悔しいはず。
……そんな私がこの場にいてもいいの?
ふと、そんなことを思ってしまい、リンとミナに「顔を洗ってくる」と告げて、水場へ向かった。
「…楽しかったなー……」
ポツリ、と呟いた。
つい数日前ではこの日常が当たり前だった。
みんなと部活しながら笑ったり、テストの点数を言い合ってみたり、一緒に宿題したり、学校帰りに喫茶店に寄ってみたり……
だから、久々の弓道も凄く楽しかった。
一息ついて、近くのベンチに座ると……いつの間にか隣りに小さな男の子が座っていて、話しかけられた。
「お姉ちゃん」
「……私?」
……見知らぬ男の子。
なんて無邪気に笑うんだろう。
……似ても似つかないじゃない。
「うん。さっき見てたけど凄かったね!僕見とれちゃったよ」
「ふふ、ありがとう…………骸」
私がそう呟くと彼は一瞬驚いたけど…すぐに表情を戻した。
今度は、無邪気な男の子の表情ではなく、私の知っている骸の表情に…だけど。
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