紅涙の欠片
□Piece20 未来へ続く扉
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感謝してる。みんなに出逢えたことに。
嬉しかった。私のことを信じてくれて。
いっぱい涙を流したあの日々を心に刻み、歩いていこう。
今まで護ってもらった分をいつか返せるように……頑張ってくる。
だから、さよなら≠ネんて言わないよ。
Piece20 未来へ続く扉
「本当に行っちゃうのか?柚稀」
武がちょっぴり寂しそうな表情を浮かべて呟く。
「……うん。もう決めたことだから」
今、私はキャリーケースを片手に空港にいる。
あの日、帰ってからすぐディーノ兄にイタリアに行くと伝えた。
するとすぐにディーノ兄とリボーンちゃんが手続きをしてくれた。
学校側にはイタリアへ留学、ってことにした(らしい)。
一応ディーノ兄が1週間の時間をくれたので、友達ともちゃんとお別れをしてきたし、荷物もちゃんと片付けてまとめることも出来たし……なにより、ちゃんと気持ちの整理がついた。
今では、ちゃんと戻った昔の記憶を受け入れてる。
「今回は絶対に手紙書いてよ?」
「…あ、ツナ。言い忘れてたんだけどさ……私、ちゃんと手紙書いてたよ?」
「……え?」
「ほら、ツナ……あの雨の日、「3年間も行方不明で」って言ったでしょ?確かに8ヶ月間は音信不通だった。それは認めるけど……それまでの2年ちょっとは殆ど毎月手紙、出してたんだよ」
「……嘘、本当に?」
「うん。ただそれがちゃんと届いてるのか、は別だけどね」
私がそう言って軽く笑うとツナは「母さんーっ」って小さく呟いた。
あの奈々さんのことだからね……ツナに言ってないって可能性もあるよね?
「ツナももう忘れてるかなー?と思ったけど一応言っておこうと思ってさ」
「……帰って母さんに聞いてみる」
「うん、そうしてみて」
ツナにそう言い、今度は隣りにいた隼人に視線を移したけど……ガラにもなく、必死で何かを悩んでいる感じがした。
何か言いたそうな感じもするし……何かあったのかな?と私も記憶を探ってみると……ひとつだけ、思い当たる節を見つけた。
「……隼人」
「…なんだ?」
「強くなったね。それから、ちゃんと居場所を見つけたんだね」
ニッコリと微笑んでそう言うと一瞬隼人が目を見開いて、はぁ、と大きく溜息をついた。
「やっぱりか。ったく……俺としたことが……不覚だった」
隼人のその言葉に思わず笑ってしまった。
ツナと武は頭に疑問符を浮かべてるけど。
「安心した。お前だってちゃんと居場所を見つけたみたいで」
「ふふ、ありがとう。……スモーキン・ボム≠ウん」
「バッ……その名で呼ぶんじゃねぇ!」
私がそう呼ぶと、隼人は頬を赤く染めてそう言い叫ぶ。
その光景に、私はまた笑みが零れた。
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