10/29の日記

07:25
不変な鳥籠。
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「チャオ。」

巷では何気ない挨拶に使われると言う言葉は、彼の口から発せられただけで、何か特別な物の様に僕の耳に響いた。

「どうした?」

何時もの様に微笑みながら、優しく目を細める彼は世の中では美しいと賞賛される者なのかもしれない。
最近そんな事をぼんやりと考える様になっていた。
これは『変化』だ。

「いえ…。」

そんな僕自身に少し驚く。

「座らないのか?」

遠回しに着席を促されて座り慣れない椅子に座れば、満足そうに微笑む。

「調子はどうだ?」

何時も、何時も。
始めはこの言葉。

「この前と変わりません。」

あまり間隔を空けずに自分を訪ねてくるのに、そうそう調子等変わるはずがない。
此処には、彼以外の変化は皆無なのだから。

だが、会う度に『調子はどうだ?』と尋ねられては、『この前と変わらない』と答えている。
だけど、それは少し違う。
本当は彼が来る度に僅かだが、しかし確実に、僕は変わっていた。
それが、少し怖かった。

「そうか、それは何より。」

そう言いながら、今回も彼の瞳には軽く影が落ちた。
ズキリ。
彼の瞳が陰ると、何故だか胸が痛い。

「あ、の。」

話しを反らす様に話題を代えようとするが、自分には話題がない事を痛感する。

「ん?」

「今回、は。あの…何時もいる、『赤』…は居ないのですね。」

「あか…」

少し困った顔をされて、しまった。と思った。
僕は色を知らない。
此処は白しかない。だから色を知らなかった。
彼を形成する色も、僕が『赤』と呼んだあれの色もよく分からない。
本当に『赤』と言う色なのかすら定かではない。
無知ではなくて、必要とされなかったから色彩の知識は与えられなかった。
否、色彩だけではなく、奴等が必要としない知識は与えられてない。
それと同時に彼の居る世界には個を分別するための固有名詞が有ることを思い出した。

「あれにも名前があるのだが…、まぁいいか。」

そう、名前と呼ばれる僕には不必要な物。
確かに赤だしな、と何処か納得した様に頷き、フワリと笑う。

「で、奴がどうした?」

「い…いえ。ただ来る時に毎回居るのに、居ないので。」

「外に…その扉の向こうにいるさ。今日はお前と2人きりで話がしたくてね。」

僕と彼を隔てる机に肘を付き頬杖を付くと、ニコリと子供の様に笑った彼。

「あれ、は…、何ですか?」

「ん?奴は私の家族の様なものだ。敢えて言うなればかわいい弟だな。」

「家族…弟。血縁関係が有る集合体の事、ですか?」

「いや…あれと私に血縁関係はない。ただ…最も遠い兄弟で何者よりも近い他人なんだ。」

「はあ、」

よくわからない。
けれど、彼にとっては大切なモノなのだろう。

「そして、私はお前ともそうなりたいと思っている。」

「は?」

「なぁ、  。」

「はい。」

「自由が欲しいとは思わぬか?」

「自由…ですか?」

彼の言う自由が僕には分からない。
此処以外の世界を知らない僕には不自由すら理解できない。此処は…この世界は僕にとっては十二分に自由だと感じているけれど、多分その事事態を彼は不自由だと感じているのだろう。

「本当の自由の意味も知らず、この外界から遮断された世界で朽ちるだけ。」

それで良いのか?そう紡がれた言葉はとても簡素でありながら何よりも難解に思えた。

「お前は、この不変な鳥籠の中で満足しているのか?」

僕よりもずっと大きな手が、そっと頬を撫でる。
真っ直ぐに合わせられた瞳は、何処までも純粋な色。

「変わる事を憂うならば私と共に来るが良い。」

「共に…?」

「手を取ったな?今日から私の弟だな。さ、帰るぞ!!」

「え?あ…ちょっ!!」

「G!!帰るぞ!!」

そして、あっさりと激しい音をたて壊された僕の鳥籠(へいおん)
その先に待ち受けていたのは、美しくも、醜い、輝かしい世界。
だが、彼が一緒に居るならば、何も怖くない。
そう言う僕をGが笑った。




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初代霧や初代嵐が出る前に書いた話し。
ちょこっと書き直して、ちょちょっと書き足した。
そして揚げてみた。
あちらこちら、セリフだけなのは、其処を想像しながら読んで欲しかったから。
べ、別に…手抜きなんかじゃないんだから!!←


初代霧は子供。
施設ってのは、なんか…国家容認のスパイ育成所とか、そんなとこ。
だから、名前は番号です。
名前はジョットがあげました。


初代嵐は最初獄寺さんイメージだったから、灰色と表記したのですが、赤だった…。
書き直しましたよね。



ってか、この作品のジョットもGも多分15〜16歳くらいなのかな。
じゃあ、初代霧は12歳くらいかな。←




もしかしたら書き直すかも。
美鹿でした。




 

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