愛楯【短編】
□【ラブコンプレックス】
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───与える事しか
出来なかった…───
甘ったるい色香の視線が、俺を見る。
濡れた唇が近づき…俺を呼ぶ。
この時点でこの女は、俺の欲求を処理してくれるだけの、ただの《肉塊》
微笑んでやりゃ
《肉塊》は頬を染める。
「最高だ」と囁きゃ
《肉塊》は優越感に浸る。
腰を振ってやりゃ
《肉塊》は喜びに鳴く。
下らねェ
偽りが、そんなに嬉しいか?
「ねェ阿含…もう一回、」
それは、言葉《偽り》の追加か?
それとも、情事《無情》の催促か?
《肉塊》の分際で、おねだりか…
舐めてんじゃねェぞ
テメーに、愛はねェよ。
「………フゥ…」
「ねェ…阿含」
─────刹那…
響き渡る、設定済みの着信音。
鐘が鳴る。
夢を見るのは、おしまいだぜ?
《肉塊》なシンデレラ……
─────ピッ…
「おぅ…どした?」
「…あ"〜悪ィ忘れてた……マジ悪ィ」
「や、なんも…マジ忘れてた」
「埋め合わせ、すっから…
あ"?ハッ、遠慮すんなよ」
「今から行っから…あァ、マジで」
「気にすんな…おぅ……後でな‥」
「愛してる…」
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