オール短編A

□最遊記序章A
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「──くだらないなぁ。」















少年は囁く

酷く、つまらなそうな顔で





修行僧たちの浮かれた話

三蔵法師の話

巫女の話





少年は呟く

酷く、退屈そうな顔で















「──くだらないなぁ。」















少年は、生きながらに



死んでいた…──────





















いつもサイクルは同じ。
特に変わってても、面白味はない。
何をやっても退屈。

──彼の瞳は、そう語っている様だった。





「…何でしょうかねぇ?」



庭を掃いていた手を止めて、自分をジッと見てくる光明に健邑は問いかけた。

一体なんの様だ?
てか見過ぎでしょ。
てか何で此処に居るの?

意味不明な光明の出現。
健邑の問いかけに微笑んだままだった光明は、少し間を空けてハッと答えた。





「あァ、いえね。
ウチの江流も大きくなったら、こんな感じかなァって。」

「…江流?」

「私達の息子みたいなものです。
ちょっと似てる所がありましてね。」





平然とそう述べる光明に、健邑はやや間の抜けた顔を浮かべた。

息子?
私達の?
三蔵法師と巫女の?

光明が言った「達」とは、孔雀の事だろう。
仏教に身を置く者の言葉とは思えない。
男女間では当然の摂理だろうが、神々に身を捧げる立場の人間以外での話だ。
この男はその自覚があるのだろうか…

健邑は少し呆れた眼差しのまま光明を見返した。



「俺に…? 顔がですか?」

「いえ? 顔は全然。」



じゃ、どこがよ…

健邑は完全に呆れと無関心を抱いた。
この男の言動は本当に理解できない。
そして、したいとも思えなかった。
だが相手は最高僧、三蔵法師様。
失礼があっては後々の事態が面倒だと、健邑は当たり障りのない受け答えをした。



「へー、今幾つです?」

「39ですが」

「いや、アンタじゃなくて、」



どうしよう…この男、扱い難い。

素で答えてるだけに反応に困る。
今まで生きてきて、ここまでの天然に出会ったのは初めてだ。
面倒臭い…そして迷惑だ。

健邑は関わりたくない思いの一心で光明から視線を逸らし、掃除の手を早めた。
早いとこ此処から逃げ出したい。
今は見ない孔雀の存在を強く求めた。
いや…この際、この男と2人っきりじゃなければ誰でもいい。
健邑は光明の語る愛弟子の話を右から左へ受け流しながら心の篭ってない相槌を打った。

そして聞こえてきた他者の足音に、心底感謝の意を抱いた。





『貴様…こんな所に居たか』

「あれ? 何をそんなに怒ってるんですか孔雀。」

『知れた事…貴様がフラフラしとる所為で、私が郷代に怒られたではないか。』

「いやァ、それはスイマセン。」

『…フワフワしよって、この楽天家が。』





嗚呼、この人も苦労してるなァ…

飄々とする光明に青筋立ててキレかける孔雀を見て、健邑は心底同情した。
ついついその意を視線に乗せてしまい、それに気付いてか…孔雀と視線が交わった。





『お前は…確か、健邑だったな』

「どうも。」

『…成る程な……このお節介。』

「耳が痛いですねぇ」





なんの話をしているか健邑には分からなかったが、孔雀の言葉が褒め言葉ではない事だけは分かった。
そして2人が醸し出す雰囲気は、正しく夫婦に近いモノを感じた。
本当に…マジでデキてる、とか?
何故か居た堪れない心境に浸る健邑。

気分的には、親のラブシーンを偶然目撃してしまった感じだ。



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