オール短編@

□最果てまで走れ
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「おまっ、なにをいきなり…!」

『なーにが、いきなり?
もう卒業だよ?これ逃したら、』

「分かってる!…分かってんだよ」



あーあ。またウジウジと…
下を向いて濃い影写すリョータ。
もうウンザリだ。
いい加減イライラする。
バスケじゃ電光石火とか呼ばれてたけど、恋愛においちゃ、亀並みじゃん。
言いたいけど言えない。
言ったら絶対コイツ自殺しちゃう。



『…やり残しちゃ駄目だよ』

「……」

『後悔って、後から悔やむって意味だし…
後からじゃ遅いんだよ?』

「……」

『…リョータ、』

「俺さァ、」



リョータが立ち止まって口を開く。
私も足を止めて、コイツの数歩前に佇む。
濃い影が、目一杯伸びてるのが見えた。





「今じゃなくても、イイんだ」

『は?』

「焦って告っても、どうせまた振られる。
だったら、もっと時間かけてーし」

『かける時間なんてあるの?
卒業したら、バラバラになるんだよ?』

「また会える。」

『…その自信はどこから、』

「会えるよ、だって
生きてりゃ…どっかで会えるのが人間だし、人生ってそうだろ?」



濃い影が、2つ、繋がった。



「終わりじゃないんだ。
だから、寂しく思う事なんてねーって」

『…』

「っな?」





コイツのポジティブは、花道以上。
そうじゃなきゃ、同じ人を何年も思い続けられない。
前だけ見て、後ろは復習でチラ見。
そんな猪男が、コイツだった。

終わりじゃない。

始まりでもない。

ただただ、走るのみ。





『…馬鹿だわ、ホント』

「馬鹿でケッコウ」

『ばーか、キノコはーげ、ちび〜』

「チビじゃねえ!!
少なくともテメーよりゃデケーぞっ!!」

『平均的チービ』

「殺ォーす!!!」





終わりじゃない。
始まりでもない。
卒業は、続きなんだ。

今まで走ってきた道筋の、続き。

一緒に走ってきた人達も、同じ。
共に走れなくても、どこかで走ってる。
自分だけじゃない。
皆も走ってる。

息を切らしながら
汗が流れながら
足が縺れながら
走って
走って、





『マックまで競争!』

「よぉーし!ビリはゴチ!」

『じょーとー!!』





全力疾走!!










私達は繋がってる



コケても止まらない

立ち止まったら、追いてかれそうだから。

死ぬ気で走ります!




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