オール短編@

□最遊記外伝@
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退屈に感じるのは、当たり前。


変化も何もない
ただ其処に在るだけの、この世界では退屈もまた一つの一興に思えるかもしれない。

だが偶に、ふと耳を掠める言葉がある。



─────退屈は、人を殺せる

─────不変は、人を腐らせる



変化のある、下界。
其処で息吹く人間達が溢した言の葉。

酔狂は一言。

だが、実に下らない。

己の世界しか知らぬ人間達は、その狭い世界観でしかモノを語れぬ。
この不変な天界が、あるとも知れずに…

人々は、この場所を、天国と言うだろう。
それこそ戯言だ。



「死」の存在しない世界には、「生」さえ息吹かない。
その温もりを、感じれない。



脳が、魂が、常温のまま
生温く溶けてゆく。

その残酷さにも、気付く事無く…










この世界に染まってしまえば、死んだも同然だ。










『─────つまらん…』



味のない日々。
それを如何に味わい深くするのは、己しか出来ぬ事。
忘れてはならぬ、悪足掻き。

日々の日課で、定着している指定席。
天界を一望できる高い屋根に上り、世界を肌で感じるこの一時は大事な時間。
暖かい日差しを全身に浴び、より近くにと腕を伸ばして空を切った。

溢した言葉は、誰の耳にも入れてはならない本音の塊。

空だけは、全てを知っていた。



流れ行く桜の花弁だけが、それを聞いていた。










「こんな所に居たか…」



かけられた声。向けられた言葉。
だが気配だけは先程から感じ取っており、驚愕も動揺も抱かない。

唯、面倒だという心境意外は…







『……何の用だ観世。
人の娯楽を邪魔する程、無粋な輩でもあるまいに…』


「娯楽ね…
日光浴とは名ばかりのサボリ常習犯が、何ホザいてやがる。」


『心外だな。
仕事なら既に片付けてあるぞ。
お前とは違ってな。』


「ぶっ殺すぞ」



青筋立てる同僚を鼻で哂う。
どうあしらった所で、そこから動きそうもない観世の姿勢に溜息を溢す。
屋根から下り、奴と同じ目線で話を聞こうと口を開いた。







『用件は何だ?
書類の催促でもあるまいに…』


「…お前お得意の予感か?」


『貴様の面が厭らしく歪んでいる時点で、イイ予感はしない』


「ほんっと腹立つ性格してんなァ!
───着いてこい。もう金禪は呼んでる」


『なに…?』


「恵岸行者が、下界で面白い動物を保護したらしい」










感じた予感は…
















「外見は小さいが、獰猛な

─────黄金の眼を持つ動物だ。」















予兆にも似ていた。






…───to be continued

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