オール短編@

□最遊記外伝A
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少年が目を輝かせて此方に歩み寄ってくる…殺意はない。
あるのは単純な好奇心と、溢れんばかりの感動だ。

彼が、私と金禪の前に佇む。





「…何だよ」

『……どうした?』

「───すげー、キラキラしてんな」















「たいよう と かぜ みたいだ」





金禪の、眩い金髪

私の、劈く銀髪

それらを見つめて笑顔を零しながら
少年は歓声を囁いた。

私も…金禪も…
突然の言葉に我を忘れて、目を見開き
声をも忘れて固まった。










「ご、御無礼をッ
金禪童子様!! 孔雀明王様!!!」

『───いや…構わない、静まれ恵岸』



声を荒立てる恵岸。
その音響に平静を取り戻す。
一声かけ、未だ此方を見つめる少年を見つめ返し、そっと彼の髪に指を入れた。





『……風、そう見えるか少年?』

「うん!すげーきれい!」

『ふふ…
そんな例え方をされたのは初めてだ
────なァ、金禪?』

「!…ふん、猿の戯言だ」

「さッ、サルってゆーな!
この むくれっつら!!」

「……ンだと…!」

「『ブッ』」



隣で壮絶な攻防戦が開催される中、私は観世と共に感情のまま笑い声を上げる。

恵岸の頭を抱える姿も、その種だ。

上がる頬をそのままに観世と目配せをし、悲観的な恵岸へ言葉を放つ。






「おい、恵岸」

『この少年、つまりは天界で保護すれば良いのだな…?』










「預かってやるよ」

『此処でな』





館内に驚愕の念が広がる。

あまりに信憑性のない私達の発言。
一早く非難の声を上げたのは、観世の御付でもある二郎神だった。





「な、何を仰るんです御二方!!
孔雀明王は誠に多忙な身!
観世音菩薩に至っては花だってお育てになった事ないじゃないですか!?」

『言うなァ、お前も』

「だァれが 俺が 育てると言った?」



青筋立てながら言う観世に笑いが続く。

「俺が」と強調した発言に、二郎神共々
周りの人物たちは疑問の意を表す。
その答えを…

観世と共に息を合わせ、明かした。










「全ては我が甥」

『金禪童子に一任しよう』










「……なッ…
何ヌかしてんだ、テメー等!!」

『騒ぐな…たかが子育ての一つや二つ』

「増やすな!!
冗談こいてんじゃねーぞオイッ!」

『喜べ、これはマジだ。』

「菩薩と明王の命だぜ?
ありがたく頂戴しな。
あァ…名前付けとけよ、お前が飼うんだから」

「〜〜〜〜!!!」



怒りに震える金禪。
とてつもなく目付きが悪く、射殺さんとばかりに此方を睨み付けて来る。





『安心しろ
何もお前だけに任せようとは思ってない。
手が空いたら、私も参加させて頂く。
…子育てには母親の存在も必要だろう?』

「!なッ…何が母親だ…!」



悪態付くも、染まりきった頬では威力も皆無。
それが、いやに可笑しく
少年の頭を撫でながら、金禪を見ては喉で笑いを殺した。
此処に妙な光景が広がる中…

観世が、意味深げに囁いた。















「太陽と風みたい、か…

凄ェ口説き文句じゃねぇか?
─────金禪、孔雀」















退屈は恐怖

だが、それは…





もう 過去の経過







不変が今
砕かれようとしていた……─────




…─────to be continued

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