オール短編@
□最遊記外伝C
2ページ/4ページ
「─────こんにちわ」
『…お、天蓬じゃないか』
「孔雀さん、御久し振りですね」
突如、開け放たれた扉から姿を現した知人。
友人と銘打たないのは、そこまで親しい訳ではないから。
寧ろコイツは元々、孔雀の友人だった。
それが彼女系列で知り合い、本好きのコイツが俺の書斎から勝手に本を持ってく…
謂わば、図書室の管理人と借りる者…といった関係だ。
「部屋を片付けてたら、貴方から借りてた本が出てきましてね。
そろそろ返さないとと思いまして。
どうも有難う御座いました。」
「…半ば諦めてたがな。
もう返ってこない物と思ってた」
「失礼な人ですね…僕だって借りた物くらい、ちゃんと返しますよ」
『随分前に貸したままの哲学書、まだ返ってきてないが?』
「…………………近い内に」
「多分もう返ってこねーな。」
俺の指摘に笑って誤魔化す天蓬を、孔雀は冷たい目で見つめる。
次には肩を竦め、溜息をついては仕方ないと呟いた。
何事も諦めが肝心らしい。
「しかし…」
「?」
「暫く来ないうちに、随分と賑やかになりましたねェ」
先程の孔雀と同じように呟く奴の顔は、どこか腹立たしい。
この現状を客観的に楽しんでる面だ。
なんともムカツク。
だが言い返す言葉もなく、頭を抱えて小さく同意。
隣で静かに笑ってる孔雀を恨めしく思っていると
この惨状の製作者が何食わぬ顔で戻ってきた。
「金禪〜……あ!孔雀姉ちゃん!!」
『よぉ少年、今日も元気そうで』
たった今俺を呼んでいた筈の悟空は、孔雀を視界に入れた瞬間
目を輝かせて彼女に飛びつき、擦り寄っていった。
こうして見ると、そこらの親子と何ら変わらないな…
「あのね、あのね!
オレ、金禪に名前付けてもらったんだ!
オレね、オレね!───悟空ってんだっ!!」
『……悟空…そうか、良い名を貰ったな』
「うん!!」
微笑ましい…
今の2人を、そう言うのだろうな。
『ほら悟空
客人が居るんだ、ちゃんと挨拶しな』
「お客さん? …あ。」
「こんにちわ、君は悟空というんですか」
「うん!! おじさんの名前は?」
「……お兄さんは天蓬です。
金禪と孔雀さんとは古くからの友人でしてね
天ちゃんって呼んで下さいね。」
「わーい、天ちゃんだー」
『……天蓬…』
「…何が天ちゃんだ」
ノリ良く悟空に自称の渾名を名乗る天蓬。
傍から見れば保父さんだ。
だが俺達は奴の本業(本性)を知っている為、何とも滑稽な光景だ。
孔雀は完全に呆れを滲ませ、かく言う俺は妙な苛立ちを抱いた。
.