オール短編@

□最遊記外伝C
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「─────こんにちわ」



『…お、天蓬じゃないか』

「孔雀さん、御久し振りですね」



突如、開け放たれた扉から姿を現した知人。
友人と銘打たないのは、そこまで親しい訳ではないから。
寧ろコイツは元々、孔雀の友人だった。
それが彼女系列で知り合い、本好きのコイツが俺の書斎から勝手に本を持ってく…

謂わば、図書室の管理人と借りる者…といった関係だ。





「部屋を片付けてたら、貴方から借りてた本が出てきましてね。
そろそろ返さないとと思いまして。
どうも有難う御座いました。」

「…半ば諦めてたがな。
もう返ってこない物と思ってた」

「失礼な人ですね…僕だって借りた物くらい、ちゃんと返しますよ」

『随分前に貸したままの哲学書、まだ返ってきてないが?』

「…………………近い内に」

「多分もう返ってこねーな。」



俺の指摘に笑って誤魔化す天蓬を、孔雀は冷たい目で見つめる。
次には肩を竦め、溜息をついては仕方ないと呟いた。

何事も諦めが肝心らしい。





「しかし…」

「?」

「暫く来ないうちに、随分と賑やかになりましたねェ」



先程の孔雀と同じように呟く奴の顔は、どこか腹立たしい。
この現状を客観的に楽しんでる面だ。
なんともムカツク。
だが言い返す言葉もなく、頭を抱えて小さく同意。
隣で静かに笑ってる孔雀を恨めしく思っていると

この惨状の製作者が何食わぬ顔で戻ってきた。





「金禪〜……あ!孔雀姉ちゃん!!」

『よぉ少年、今日も元気そうで』



たった今俺を呼んでいた筈の悟空は、孔雀を視界に入れた瞬間
目を輝かせて彼女に飛びつき、擦り寄っていった。

こうして見ると、そこらの親子と何ら変わらないな…





「あのね、あのね!
オレ、金禪に名前付けてもらったんだ!
オレね、オレね!───悟空ってんだっ!!」

『……悟空…そうか、良い名を貰ったな』

「うん!!」


微笑ましい…
今の2人を、そう言うのだろうな。





『ほら悟空
客人が居るんだ、ちゃんと挨拶しな』

「お客さん? …あ。」

「こんにちわ、君は悟空というんですか」

「うん!! おじさんの名前は?」

「……お兄さんは天蓬です。
金禪と孔雀さんとは古くからの友人でしてね
天ちゃんって呼んで下さいね。」

「わーい、天ちゃんだー」





『……天蓬…』

「…何が天ちゃんだ」


ノリ良く悟空に自称の渾名を名乗る天蓬。
傍から見れば保父さんだ。
だが俺達は奴の本業(本性)を知っている為、何とも滑稽な光景だ。
孔雀は完全に呆れを滲ませ、かく言う俺は妙な苛立ちを抱いた。



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