小説
□キミの匂い
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黒子の香りがいつもと違う。
誤解されたら困るから一応付け足しておくけど、好き好んでいつも黒子の匂い嗅いでるわけじゃないから。
風紀委員の仕事から帰ってきたあと必ず、癒やしてなんて言ってくっついてくるから嫌でも覚えてしまってるわけで。
いつもは大人っぽい香りっていうか、なんていうか…最近はほんのり甘くて女の子らしいっていうか………
別に、どの香りでも好きなんだけど…
…って、これじゃまるで黒子が好きみたいじゃない!!なしなし!今のなし!!
誰があんな変態…
「ただいまですの」
「ひゃあうっ!?」
「お姉様?」
「お、おかえり黒子!はやかったのね!」
「いつも通りですわよ?」
「え…あ、そっか!そうよね!あは、あははは、はは」
危ない危ない…。
いきなり帰ってきたからつい動揺しちゃったわ…。
このままじゃ抱き付かれた時パニックになてしまうかも…
平常心、平常心…
「ふぅ、今日もくたくたですわ」
きたっ!
このセリフは黒子が抱き付く寸前の言葉。
別に期待してるわけではないけど、まぁ仕事頑張ってるし疲れてるし、ご褒美みたいなもんよ。
「それより聞いて下さいなお姉様。今日路地でとんでもないスキルアウトがいまして」
あ、あれ…?
「能力者を無差別に攻撃していくという連絡を受けて現場にかけつけると、驚く事にそのスキルアウトは女性の方でして」
おかしく、ない…?
「驚くのはこれだけではないんですのよ。しかもその方寮監にそっくり!もう笑っちゃいそうになりましたわ」
黒子が…抱き付いてこない…?
いつもなら…鬱陶しくべったりしてくるのに、なんで?
き、きっとこの話が終わってからよ!そうよ!
「さて、と」
きた!
仕方ないから存分に甘えさせてあげるわ、仕方なくよ!
「夕食までまだ時間がありますので少し眠らせて頂きますわ」
「…え」
なん、で…なんで…っ
「なんでよ…」
どうして今日は…
「おねえさま?」
いつもみたいに、こうやって…
「お、おね…っ!?」
気が付くと私は無意識のうちに、布団に潜り込んだ黒子を背中から抱き締めていた。
鼻孔をくすぐる甘い香。
あぁ、やっぱり好きだ。この匂い
「あ、あの…」
「あんた、香水でもかえたの?」
「いえ、むしろ最近は香水をつけてませんが…どうなさいました?」
「…そう。じゃぁこれは黒子自身の匂いってわけね」
「……?」
「好きよ私。この香」
「ふふ、おかしなお姉様」
キミの匂い
(黒子のならどんな匂いでも好き!)