小説

□嘘を吐く人
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「あんた顔色悪くない?」




白井黒子は嘘つきだ。




平気な顔をして
あっさりと嘘をつく。



今だってほら、



「そんな事はありませんわ。黒子は元気ですの」




何でもない顔でさらりと嘘を吐く。



額に汗浮かべて唇噛みしめてるくせに大丈夫なわけがない。


こんなわかりやすい嘘…



どれだけあんたと一緒にいてると思ってんのよ




「最近寝てないでしょ」



「始末書を書き終わった後ちゃんと寝てますわ」



嘘。目の下のくまは何よ



「ご飯も食べてない」



「仕事の合間に食べてます」



嘘つけ。痩せてきてんのわかるっての



「なのに無理して仕事に行って…」




「これくらいなんともありませんの」



まるわかりの嘘。
だけど私はこの子の前では優しい先輩でいたい。



「…そっか。なら良かったわ。もう夜遅いし寝なさい」



わざと黒子の嘘に気づいてないフリをして話を合わす。




頑張ってついた嘘だもんね。
知らないでいてあげるわ。



「私はまだ調べたいものが…。先に眠って下さいな」



「そう?残念だなぁ。今日は私の布団で一緒に寝てあげようと思ってたのに」



「お、お姉さまのお布団…っ!?う…っ、ですが…始末書などが…」



「あんたは頑張りすぎなのよ。今日くらい息抜きなさい」



「では…失礼します、の…」



おずおずと遠慮がちに布団の中へ入ってきて体を縮こまるせる。



…やっぱり少し痩せてる。


少し前より骨ばってる背中にそっと手を添えた。



「ちゃんとご飯食べなさいよ」



「大丈夫ですの。お姉さまが私に内緒で鞄に入れて下さったパンちゃんと食べましたんで」



「何の事かしら」



「あら、しらばっくれるんですの?こんなお人好しお姉さましかいませんわ。今だって黒子が寝やすいように抱きしめてくれて…」



「おめでたい思考ね。ただ抱き枕かわりにしてるだけよ」



「クス、嘘つきなお姉さま」



「お互いさま、でしょう?」



「ふふ、ですわね」











(あなたの嘘は優しくて)

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