小説
□子供扱い
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「喫茶店でも行かない?」
警邏終了後、にこやかに誘ってきたのは固法先輩。
歩きまわって疲れてるでしょう?と優しく気遣ってくれているのだろうが私は子供ではない。
可愛がってくれるのは嬉しいが、そろそろ他の同僚と同じ扱いをしてほしい所だ。
今日だって警邏は先輩と同行しないと行かしてくれなかったし。
過保護にもほどがあるのではないどろうか…。
なんだかんだ考えてるうちに、断る術もなく店の中に入ってしまっていた。
「警邏疲れたでしょ?頑張ってたし好きなもの食べていいわよ。あ、ほらこのパフェとか美味しそうじゃない?」
「パフェが美味しそうなのは認めますが私別に疲れてなど…」
「だだこねだす前にご飯あげないと大変でしょ?」
「わ、私はだだなんてこねませんの!!」
「そうやってむきになるから赤ちゃん扱いされるのよ?」
「赤ちゃん…!?なんでヒートアップしてますの!?」
「まぁまぁ。それより白井さん、食べたいもの決まった?」
「では…私はこのチョコパフェで」
「ふふっ」
「な、何がおかしいんですの?」
「だって白井さん…子供扱い嫌がってる割にチョコパフェって…なんか可愛くて」
「そういう先輩は何にしたんですの…?」
「私は抹茶パフェ」
「先輩も子供じゃないですか!」
「残念。抹茶は大人しか食べません」
「私だって抹茶くらい「あ、すいませーん注文いいですか?」」
私の言葉を遮りとことん子供扱いする先輩を膨れっ面で睨みつけると、クスクスと笑いながら店員に注文をとる。
凛々しげな横顔、整った顔立ち。
先輩は大人っぽい。
それに比べたらはまだまだ自分は子供なのだろうけど、もう立派な中学生だ。
いい加減扱い方をかえてほしいものだ。
やはり身長が原因なのだろうか…
それとも胸…?
どちらにせよすぐに成長は難しい。
それにしても、どうやってあんなに胸が大きくなるのか…
私もあんな風に大きくなれば先輩も大人扱いをしてくれ…
「白井さんが巨乳って違和感あるかなぁ」
「なっ!?何で考えてる事が…」
「私透視能力者だし」
「それは関係ありませんの!」
「ふふ、白井さんさっきからずっと私の胸見てるから」
「え、…そんなに見たつもりでは…」
はたから聞けばまるで私が変態さんのような言葉。
運の悪い事に丁度店員の方が注文のパフェを持ってきた。
もしかして会話を聞かれてただろうか…?
どうしよう…恥ずかしい。
顔が赤くなるのを誤魔化すかのように、差し出されたチョコパフェをパクりとほおばった。
「後、言っておくけど例え白井さんが巨乳になっても子供扱いは変わらないわよ」
「えっ!?何でですの!?」
「当たり前じゃない危なっかしいしいつまでたっても子供よ」
「お言葉ですが固法先輩、私もう小学生ではございませんの。レベルだって4にもなれましたし一人前の風紀委員にだってもうすぐ…」
「そうね、頬にクリーム付けながら必死に話す白井さんが可愛いのはよくわかったわ」
「ッ!?」
ガチャンと荒っぽくスプーンをパフェの容器に放り込んで、ひたひたと右手で口元を弄る。
しかし私の悲痛なる叫びを妨げる元凶生クリームになかなか巡り会う事ができない。
「違う違うそっちじゃなくもっと右」
「ここ、ですの?」
「んー、じっとしててね」
「え?あの、先ぱ…」
瞬間、だんだんと先輩の距離が縮まってきたと思ったのもつかの間、
頬に生暖かい感覚を感じて、それが固法先輩の唇だと理解するには少々時間がかかって。
「せ……せせせせ…先…ぱい…!!?」
「はいクリームとれた」
「も、もっと普通の取り方がありましたでしょう!?また子供扱いしてからかわないで下さいな!」
「あら、これは一人の女性としての扱いよ?」
「……?それは一体…?」
「気になる…?」
「もちろんですわ。先輩が子供扱いを完全にやめていただく手がかりかもしれませんし」
「じゃぁ後で私の寮来なさい。たっぷり教えてあげるわ」
「はいですの!」
この後黒子の身に起こった大人の階段二段跳ばしの物語はまた別のお話し。
→あとがき