黒琴
□31.
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「うわ…ほんとに後ろの席に座っちゃったよ…」
バレたらどうしようという不安と、何の話をしてるのかという好奇心で、胸の鼓動が耳に聞こえるんじゃないかと思うほど高まってくる。
その音をかき消すかのように、手元にあったミルクティーをわざとらしく音をたてて飲んだ。
今私はイスごしに黒子と背中あわせな状態。
左には佐天さん、目の前にはなんだかんだ言いつつも結局はついて来ちゃった初春さんがいる。
後ろから固法先輩の落ち着いた声が聞こえてきた。
「白井さん、本題に入るけど最近どうなの?」
「え、えぇ…その話…ですか…」
トーンからして、とても楽しい話をしているとは思えない。
いつになく動揺した黒子の声が気になった。
「実は、……最近飽きてきましたの」
…飽きた?
黒子が、何に?
最近黒子がはまってるのは、これといってないはず。
もしかして…私に…?
いやいやっ、それはない!ありえない!
……と、言いたいところだが最近いつもよりスキンシップが少ないし、風紀委員の仕事が忙しいからと私に構ってくれないし。
まさか…本当に………
「それに何か黒子の好みじゃなかったというか…正直苦手…といいますか」
好みじゃない…、苦手…?
そんな風に私を見てたの……?
「やっぱりね、白井さん飽きっぽいから」
「むぅ…そうですかね?」
「まぁすぐに新しいのを探しましょ」
「そうですわね」
何のためらいもなく、黒子はさらりと答えた。
瞬間、
私の中の何かが
音も
形もなく、
壊れた。