黒琴
□32.
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「…………ッ!!」
油断した。
「……ハァ…ッ…ハァ」
荒くなる息と、肩から流れ落ちる血を必死におさえながら、傷だらけの体を無理やり動かし路地裏を逃げ回った。
数分前、強盗があったと通報があった。
急いで通報があったもとへ向かったところ、運よく強盗犯と遭遇した。
能力を仕掛けてこないので無能力者と勝手に判断し、正面から突っ込んだところ、相手は発火能力者であってすきをつかれこてんぱにされたという。
なんて失態…
風紀委員失格ですわ…
これからどう反撃するか…
など走りながら一人作戦をたてていると、
「…ぅぐ…ぁ…ッ!!?」
背後から右足めがけてナイフが飛んできた。
ぐしゃぁ、と肉が裂け、びちゃりと血が溢れ出す音が混ざり合って奇妙な感じ。
当然足に力がなくなり、ドサッとその場に倒れ込んでしまう。
急所が外れていた事が幸いなのか、はたまたそれが狙いなのか……
カツン、コツン、
発火能力者の男が距離を縮めてくる。
「どうしたよ、風紀委員のお嬢ちゃん。怖くて腰でも抜けたか?」
「は…っ、ほざきなさい」
さて、大見得をはったもののどうするか。
発火能力者は手を私の方へ向けた。
どうやらとどめをさすつもりですのね。
「召されな」
ゴウッ、と発火能力者の右手から突風と共に炎が現れ、私目掛けて放たれた。
こんなのテレポートで回避し………
「……ァぐ…ッ!!?」
ズキン、
足と肩の痛みが激しく、テレポートの演算の集中が途切れた。
…ま…ずい……
ここで死ぬわけには………
炎がどんどん近づいてきて、
「お姉様ァ………ッ!!!」
愛する人の名前を呟き、
目を瞑った。
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