黒琴
□35.
1ページ/10ページ
黒子が死んで一年が経った。
私は三年生になり、高校に行くためこつこつ勉強をしている。
……と言いたいところだが、
私はまだ黒子が死んだ事を受け入れておらずに、ずっと寮で黒子の帰りを待っている。
黒子が死んだ……いや、
行方不明になったあの日、
黒子が私の肩を押した後の記憶はない。
ただ記憶の片隅に残っているのは、クレーンがギリギリ私に当たらなかった事と、黒子がかばったおかげで少女はかすり傷ですんだ事と、
血だらけの黒子が救急車に運ばれる姿。
気がついたら私は病院の待合室にいて、黒子は緊急手術室に運ばれていた。
そして手術室から出てきた医者の発言は、冷たく呆気なくひどいものだった。
「御坂さんッ!」
その後に初春さんと佐天さんが、顔色を変えてやってきた。
初春さんはすでに泣きじゃくっていて、服の袖で涙を懸命に拭っていた。
「白井さんは…白井さんはどうなっちゃったんですか!!?」
ガクガクと私の両肩を揺さぶってくる佐天さんの問いを、黙ってる私の変わりに医者が答えてくれた。
葬式ではみんな泣き崩れてた。
佐天さんも初春さんも固法先輩もみんなみんな、
だけど私は涙なんてのは流れない。
だって黒子は死んでないもん。
行方不明になっただけだから。
みんな泣いちゃって馬鹿みたい。
その日から私は寮から一歩も出てない。
黒子がいつでも帰って来てもいいように。
笑顔でむかえてあげれるように。
たまに初春さんと佐天さんが遊びに来てくれる。
2人がいてくれた方が黒子も帰ってきやすいだろうから嬉しい。
コンコン
「ごめんくださーい」
ほら、今日も来てくれた。
→