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□【約束の桜】
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■その後の世界
カスミとシズク【約束の桜】
ねぇシズク、あの桜が咲いたの。
子供の頃からあなたと一緒に見た桜が。
大事な大事なあの桜が。
マルコさんが私の故郷を見たいと言ってくれたから、２人っきりで日本に行ったの。
住んでいた所は想像していたよりもずっと、破壊されていた。
だけど家の近くのあの桜の樹は、奇跡的に無事だったの。
時期が遅かったから桜は散り間際で。風が吹く度に花びらが舞っていたわ。
樹の下から見上げると、淡い桜色の世界が視界全体に広がって……。
そして私に降り落ちる、無数の桜色。
何度何度も見ていた世界だけれども、いざ樹の下で見上げて見たら、言葉すらも出なかった。
感嘆のため息さえも。
マルコさんは私と見上げて、一言だけ言ったわ。
「俺もサクラが好きになった」
って。
鼻先をかすめていく花びらを追っていくと、色々な事を思い出した。
シズクと初めて見上げたあの日。
家族みんなで花見をした日。
あなたと喧嘩をしていたけれども、一緒に見るって約束をしていたから、私一人で向かったあの日。
樹の下に行ったら、あなたが照れくさそうにして、待っていてくれてたね。
あの時あなたと約束をした。
喧嘩しても、もしもお互い離れ離れになったとしても、毎年一緒に桜を見ようって。
約束だよって。
だけど私は……あなたとの大切な約束を、守る事ができない。
もう二度と一緒に見る事ができない。
ねぇシズク。
あなたとこの美しい世界を、また一緒に見たかった。
終