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□【体温】
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■その後の世界
マルコ×カスミ【体温】
「……マルコさん寒くない?」
「……寒い……かもな……」
「私のほうばかり、毛布がきてる……ちょっと待って下さい」
壊れかかった家の中で、二人は眠る。
何枚もの毛布にくるまり、向かい合う形で。
廃材を集めて焚き火をしているが、時折冷たい夜風が二人を震わせる。
そんな時すっかり世話女房になったカスミが、毛布をずらしマルコにしっかりかけてやる。
「これで……どうですか……?」
「…………………」
「やっぱり……まだ寒い……?」
「……………」
マルコの背後の壁から、隙間風が入ってきているみたいだ。
カスミは辺りをきょろきょろ見回したが、もう毛布も何も、かけるものは無かった。
カスミは恐る恐る手をのばした。
目を瞑り、息をするのも忘れて……。
マルコを抱きしめた。
自分の体温を分け与えるために。
こんな世界になって初めて……
人の体温はこんなにも、あたたかいものだと言う事を二人は知った。
「……いいな」
「はい……?」
「……寒いって言ったら……お前からハグしてくれる……」
「…………えっ」
思わずパッと体を離したカスミ。
それに対してマルコは唸る様な声を上げた。
「何故離れるんだ……」
「だ……だって……マルコさんが………」
「……俺が風邪をひいてもいいのか?」
「えぇ……?!」
「………どうなんだ」
と問われ、カスミはすっかりまいってしまった。
闇夜で分からないが、きっと真っ赤になって困っているだろう。
マルコの言葉に勝てないのは、カスミ自身も良く知っている。
「…………いくないです」
カスミはぷうっと頬を膨らましながら、マルコにまた手をのばした。
広い背中に手を回して、ぎゅむうっと抱きついた。
「……これで……いいですか」
「……あぁ」
マルコはカスミの体の熱さと柔らかさを、体ごと感じた。
大きく息を吸い込み、吐く。
「……これでいい」
そしてすっかり拗ねてしまった、カスミの頬をなぜながら呟く。
「……こうでも言われないと………お前からしてこないからな……」
「お前がキスしてくれたら……もっと寒くないんだがな……」
「え……ええーー……?!」
「……疲れた体の癒やしになるし……」
「でっ……でも!!」
「……元気になれるんだがな」
「……ほ、本当……ですか……?」
「カスミ………俺を信じろ」
「………………………」
終わり