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□【年齢差】
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■その後の世界
マルコ×カスミ【年齢差】
「…そんな感じでシズクが助けてくれたから、猫を飼えるようになったの」
「ふーん」
晩御飯後のいつもの光景。マルコさんが愛用の拳銃の整備をしながら、私の話に耳を傾けている。
私は彼の隣で話を紡いでいく。
話す内容は全て、シズクとの楽しい思い出達。
「その後でね。シズクが……」
「カスミ」
マルコさんが銃をカバーに納めながら言った。
「シズクの話はもういい」
「あっ……は、はい……」
「沢山聞いたしな」
マルコの言葉にカスミは青ざめた。
あ、あれ?もしかしてわたし……。
夢中になって話過ぎちゃったのかな……。
「あ、あのマルコさん……」
謝ろうとしたカスミの声を遮って、マルコは言った。
「それより次はお前の話をしてくれ」
「……え?」
きょとんとしたカスミにマルコは言った。
「……お前はシズクの話ばかりして、自分の話を聞かせてくれないだろ」
「……私の……話?」
「あぁ」
カスミはマルコの言葉を復唱する。
私の事?
私の事をマルコさんは知りたいの?
カスミは一瞬で顔を真っ赤に染め上げた。
マルコの気持ちが分かったし、そんな事を言われるなんて思ってもいなかったから。
「で、でも……」
しどろもどろになりながら、言葉を紡ごうとする。
「私の話なんて、シズクと違って……つまらないよ……」
「……俺にはお前の話は、つまらなくないがな……」
マルコはカスミのほうを向き、真っ直ぐに見つめた。
「お前の事を教えてくれよ」
「…………………」
マルコの言葉と視線に、カスミの口からはもう、抵抗の言葉は出てこなかった。
「…………………」
「…………………」
「…………………あの」
「あぁ」
カスミはマルコの顔を一度見つめ、また俯いた。
「………………あたしは……その……その猫を………」
「あぁ」
カスミは思う。
黙って私のツマラナイ話を聞いてくれるマルコさん。
私の事を知りたいと言ってくれるマルコさん。
毎日彼から与えられる愛情と、優しい大人の対応に、私はどうにかなってしまいそうだ。
それに私はマルコさんの一言一言に、どぎどきしているのに、マルコさんの態度は至って普通。
反対にこれから先、私がマルコさんを、どぎどきさせる事なんて、できるのかな。
これが永遠に二人の間を埋める事が出来ない、年齢差というものなのかも……
そう、カスミは思った。
終