短編小説B 

□『真夏の群青』
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目的地は都心からそう遠くないテーマパーク。
駅を降りるとすぐ目の前で、ボスッと荷物をロッカーに放り込んでオレ達は入り口をくぐった。

(天気は上々!気分は爽快、だ!)
電車内で縮こまった体をううんっ、と背伸びする。

「10代目、元気っスねー」
クスクス笑う獄寺くんの声にバッと振り返る。

「だって遊園地!久しぶりなんだもん、楽しみでさ!
う…わ!???」

ガッ!!

思わず浮かれてたら何も無い所でつまづく。

「…っぶね」
ポスン、とその胸に寄りかかって助けられて。

「ご、ごめんオレはしゃぎすぎ…」
「いえ…」

(うわわわわっ)
寄りかかったシャツを掴んで逞しい胸にドキドキして。

「…俺、も楽しいっス。行きましょうか」
獄寺くんはニカッと笑って、手をきゅうっと繋いでくれる。

「………うん」
手を繋ぐ事に照れる綱吉。
(だって)
いつも、回りの目を気にして、手を繋ぐとか肩を抱くとか、しないから、さ?

顔がカァッと赤くなる。
チラリと見上げれば、気のせいか獄寺くんの首も、暑さのせいでなく確かに赤い。

(変な、の。
なんかくすぐったい)
くすっと笑みが漏れる。

そんな綱吉を斜め下に見下ろして、獄寺も胸がとくんと高鳴る。
(10代目、なんか今日すげー可愛い…)

白いパーカーに紺のハーフジーンズ、日除けに白いキャスケット、細身の身体に似合ってて━…見ようによってはやっぱ

(女の子、みたいで)
とくん。

(いや!! 10代目はそこらの女どもよりよっぽど可愛いくていらっしゃるがっっ!!)

それだけじゃなくて芯が強くて強くて綺麗で。

綺麗で

とくん、と心臓が痛くなる。

(…俺が惚れたのは見た目だけじゃなくて、10代目の懐の暖かさなんだ)
胸に込み上げる熱さに、繋いだ手を更にキュっと握る。





 
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