短編小説B 

□ツナ誕
1ページ/3ページ





10月14日は俺の大事な大事な幼なじみの誕生日だ。
どれっくらい大事かってゆーと、抱きしめて、キスをして、それ以上の事もそりゃもうシまくりたいくらい大事なんだがっっ!

「さて、誕生日…!」
俺はピッとシャツの襟をはじく。
(今年の俺はひと味違うぜ!もう去年までの俺じゃねえ…!)

思えば去年の誕生日は、プレゼントだっつってアイツの欲しがってたマンガ大量に買って、奈々さんの作ったケーキ食ってゲームして、だべってそのまま泊まり込んじまって…

ガクッとうなだれ落ちる。
(なんって勿体ねぇえ…っ)
一晩中一緒に居たのに、何するでもなかった。今考えるとすげえ勿体ねぇ気がするけど、あン頃は一緒に居るだけで楽しかったんだ。突っ張ってる俺じゃない、ただの『獄寺隼人』でいられた、唯一の場所。
そして、今は。

(その場所が、ずっと俺の隣にあったらなあ、と…思うようになって)
アイツが俺の隣で笑ってると、俺も幸せな気持ちになれるんだ。そしてそれは俺だけじゃなくて、アイツにも同じように思ってもらいてぇ。

そんなヤツが生まれた日なんだ。特別じゃないわけないだろ?

(嫌われるのは嫌だから綱吉に無理強いするつもりはねえけど━…)
バサッと用意していた花束を抱える。

特別な日に。

(俺はアイツと、特別な関係になりてぇんだ。そう、『恋人』っていう名の)



ピンポーン、とチャイムを押す。もう夕方だ。朝はアイツが寝坊したせいでお祝いの言葉は直接言えなかったけど、メールで“おめでとう”だけは伝えてあった。





『夕飯、食べにくるだろ?』





綱吉からの返信。アイツの部屋に上がるのは久々だ。すっげえドキドキする。

(落ち着け落ち着け…)
スー、ハー、と深呼吸してたら玄関のドアが開いた。

「つ━…な?」


綱吉の姿を想像してパッと喜び勇んで声を発すると、開いたドアの向こうには吃驚したような女が立っていた。黒髪の女、髪をポニーテールにして、綱吉と同じ制服を着て━…

「ではツナさん、ハルは帰ります。また明日学校でお会いしましょうね!」

「うん、ハル、ありがとう。気を付けて帰って」
「ハルちゃん、また遊びに来てね。」
水色のパーカーにジーンズの綱吉と、ピンクのシャツにタイトなスカートの似た者親子。

「ありがとうございます、ツナさんとツナさんのお母さま!それでは」
そう言ってにっこりと笑ってドアを出る。

すれ違い様、女は俺を見て不審そうにキッと睨んだ。
ビビッ!
俺の体に雷に打たれたような感覚が走る。

(ンなろ…!)
睨まれるまでもねぇ、俺も直感で察する。

コイツは、ライバルだ。


「何してんのさ、隼人。入んなよ、風邪引くよ」
「隼人くんいらっしゃい♪ あらあ、素敵な花束ねぇ。おばさん妬いちゃうわぁ。今お夕飯の支度してるのよ? 出来るまでツナの部屋で待っててね」

ちわ、と挨拶する隼人に奈々はふわりと微笑む。
そうしてパタパタとスリッパを鳴らし、嬉しそうに台所に向かう。

「…来る?部屋」
「…ああ」

何処かぎこちなく誘うツナに、これまた居づらそうな獄寺。

二人は気まずそうにツナの部屋に向かった。






 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ