短編小説B 

□『蕩けるくらい愛してる』
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「なんだよ獄寺、もう帰んのか?」

「あ"あ"!?」
22日、終業式を終えた後の教室で急ぎ荷物を肩にして、ふと空を見上げた俺に、呑気そうな声が降った。


 † † †


「これから野球部の奴らと打ち上げすんだ。お前も来ねぇ?」

「行くか、ボケ。俺は忙しいんだ。帰って雨乞い…じゃねぇ、雪乞いしなきゃなんねーんだからな」
ニカッとした笑顔のまま肩をガシッと抱かれ、うっとおしげにシッシッと振り払う。

そんな俺たちを見て、きゃああ、と声を上げる女子たち。
阿呆か、と思う。

コイツ、山本は野球部のスポーツ特待生だ。本気なのか天然なのか、不良と評判の隼人にも、分け隔てなく普通に接してきて。
(おかしな奴)

「雪乞い? 獄寺って、ホントそーゆーの好きなのな。ああ、もしかして、ホワイトクリスマス狙ってんの? いいのなー、彼女持ちは」
人好きのする笑顔で、にぱーっと相好を崩す。

『彼女』

綱吉の事に触れられて、俺はムッとする。
からかい半分のつもりなら、気安く触れて欲しくない。

(大事な大事な、俺の宝石のような奴だから)

「確か、以前ウチの学校に忍び込んで来たんだろ? ウチの制服着て変装して。俺は合ってねーけど、見たやつがすげー美少女だったって、触れ回ってたぜ」
ウキウキした話し方。

(どこの誰だクソが…ッ!)
隼人はチッと舌打ちをし毒を吐く。

綱吉のあんな可愛い姿、見た奴本気でぶっ殺してぇ!

「…なあ、紹介しろよ。獄寺が本気になった奴って、俺マジ興味あんのな」
一転、真面目な声で話掛けてくる。その温度の差に、隼人はグッと詰まってしまう。

山本の、やたら慣れ慣れしい所は気にくわないが、その性分は認めているのだ。

「━━…本気だから、紹介なんざしねーんだよ」
そう言って、くるりと背を向ける。

カラリとドアを開け、廊下に出る。

獄寺って、一途なのなー、と。

莫迦にする訳じゃなく、温かく嬉しげな声が、扉の向こうで聞こえた。




 
━━━



未完ですが続きます♪


【title:睡恋】


 
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