短編小説B ![](http://id48.fm-p.jp/data/206/rose5927/pri/7.jpg)
□『蕩けるくらい愛してる』
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「なんだよ獄寺、もう帰んのか?」
「あ"あ"!?」
22日、終業式を終えた後の教室で急ぎ荷物を肩にして、ふと空を見上げた俺に、呑気そうな声が降った。
† † †
「これから野球部の奴らと打ち上げすんだ。お前も来ねぇ?」
「行くか、ボケ。俺は忙しいんだ。帰って雨乞い…じゃねぇ、雪乞いしなきゃなんねーんだからな」
ニカッとした笑顔のまま肩をガシッと抱かれ、うっとおしげにシッシッと振り払う。
そんな俺たちを見て、きゃああ、と声を上げる女子たち。
阿呆か、と思う。
コイツ、山本は野球部のスポーツ特待生だ。本気なのか天然なのか、不良と評判の隼人にも、分け隔てなく普通に接してきて。
(おかしな奴)
「雪乞い? 獄寺って、ホントそーゆーの好きなのな。ああ、もしかして、ホワイトクリスマス狙ってんの? いいのなー、彼女持ちは」
人好きのする笑顔で、にぱーっと相好を崩す。
『彼女』
綱吉の事に触れられて、俺はムッとする。
からかい半分のつもりなら、気安く触れて欲しくない。
(大事な大事な、俺の宝石のような奴だから)
「確か、以前ウチの学校に忍び込んで来たんだろ? ウチの制服着て変装して。俺は合ってねーけど、見たやつがすげー美少女だったって、触れ回ってたぜ」
ウキウキした話し方。
(どこの誰だクソが…ッ!)
隼人はチッと舌打ちをし毒を吐く。
綱吉のあんな可愛い姿、見た奴本気でぶっ殺してぇ!
「…なあ、紹介しろよ。獄寺が本気になった奴って、俺マジ興味あんのな」
一転、真面目な声で話掛けてくる。その温度の差に、隼人はグッと詰まってしまう。
山本の、やたら慣れ慣れしい所は気にくわないが、その性分は認めているのだ。
「━━…本気だから、紹介なんざしねーんだよ」
そう言って、くるりと背を向ける。
カラリとドアを開け、廊下に出る。
獄寺って、一途なのなー、と。
莫迦にする訳じゃなく、温かく嬉しげな声が、扉の向こうで聞こえた。
━━━![](/img/emoji/9F.gif)
未完ですが続きます♪
【title:睡恋】