短編小説B 

□『ハイスピードな恋で』
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 わぁぁぁあ…!

 授業中に校内を全力疾走する二人に、学校中の視線が向いた。


 † † †


「ど、どうなさったんですか? 10代目」
 朝ツナを迎えに来た獄寺は開口一番そう言った。
 無理もない。ツナの口には大きくバッテンが書かれたでっかいマスクが乗っかっていて。
『おはよー、獄寺くん』
 ツナはゴホゴホと咳をしながらジェスチャーでそう返す。
「風邪引かれたんスか? 無理しないで休まれたらどうですか? 僭越ながら俺、かっ看病させて頂きますしっ…///」
 心なしか赤くなりながら、心配気にオロオロする獄寺に、平気平気と笑顔を作り、ツナはパタパタと手を振る。
『大丈夫。それより早く行こうよ、学校に遅れちゃう』
 リアクションでそう告げ、不意に手を繋ごうとして、気付いたツナはパッと伸ばした腕を引っ込めた。
(〜〜っ///! 何さり気なく手ぇ握ろうとしてんのオレのバカ!)
 カァア、と頬が急激に熱くなるのを感じる。
(気付かれた? 気付かれて、ないよね、オレの気持ち…)
『い…行こうかっっ』
「はい……」
 慌てて背を向けたツナは、手を繋がれなかった事に獄寺の声が残念そうに沈んでいた事に気付かない。
 そう、二人は互いに片思い中の、両想い同士だったのだ(笑)



 † † †



 24ページ開けー、という先生の声を余所に、机にもたれかかりながらツナはぁあ、と溜め息を吐く。
 事の起こりは今朝の事。



「ああほら!朝からバトるなよっ危ないだろ!?」
 沢田家の日常は、いつも通りけたたましい喧騒から始まった、筈だった。
「ば〜っか、ば〜っか、リボーンの、バカアホま〜ぬ〜け〜!お尻ペンペンベロベロバーなんだもんね〜!」
 いつもなら制止に入るイーピンが、帰国しているのも痛かった。相手にされないのをどうとったのか、増長するようにうざいリアクションで更にリボーンにちょっかいを出すランボに、
「うぜえ」
今日という今日、遂にリボーンが切れたのだ。
「そうか、それが本音か。なら死ね」
 胸元から取り出されたのは黒光りする愛用の短銃。
「ぴぎゃあっ!何すんだじょ━━!」
「ば…っ、待てって! リボーン…!」
 いつもと違う殺気を感じてひぎゃぁあ!と体よくオレの後ろに隠れるランボに、味噌汁をかばいながら受け身を取ったオレの反応は一歩遅かった。
 ガォンッと火を噴いたリボーンの銃口から発射された弾は、見事にオレの額に命中したんだ━…。





(……まさかアレが特殊弾だなんて)
 がぁぁっくり、とうなだれるツナ。



『あれがマジでヤツの本音なら、本気で絞めようと思ったんだ』
 覚醒したオレに、リボーンは事も無げにそう言った。
「『本音弾』だぞ。被弾した人間が、心の奥底に隠し持っている一番の本音を暴く。
つーか、それしか言えねえ」
(冗談じゃない、それしかだって!?)
 真っ赤になって口をはくはくさせるオレ。だってだってそんなの…っ
「何だ、何か言えない想いでも、秘めてるのか?」
 一言も喋ろうとしないオレに、ニヤリと愉しげな笑みを口角に浮かべるリボーン。
(Σ嫌味な赤ん坊だなっっ! 読心に長けているお前の事だ。どうせオレの隠している事なんて、お見通しなんだろう!?)
「━…そろそろ学校の時間だな」
 ギクッ、
「獄寺が迎えに来ているだろう? 行かねーのか?」
 ギクギクッ!
『〜〜っ行くよ!行くよ!行きますよっ行けばいいんだろ!』
(リボーンの、ばああっか!!)
 ガタン! ツナはそうして口を押さえ家を後にしたのだ。




 
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