短編小説B 

□『passion in blue』
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「暑ぢぃ」
 パタパタと青い透明の下敷きで顔と首もとを仰ぐ。

 日本の夏だけは慣れねぇぜ。
 ドッカと机の上に両足を乗っけて、ネクタイを緩めながら、獄寺はひとつに結んだ銀色の髪をピッと指で弾く。

 湿気を伴ったじめじめした独特の蒸し暑さ。肌に纏わりつく制服のシャツの、汗に濡れた纏わりつく感触。
(首を流れる汗も脇の下も気持ち悪ィ。こういう時は、冷たい海やプールにでも飛び込んで、涼をとりてぇもんだぜ)
 脳裏に涼しげなイタリアの澄んだ青い海が浮かぶ。

 どこまでも涼やかな、青い青いブルー。

「大丈夫? 獄寺くん」
「――…のわあ!?」

 ひょいっと、急に視界いっぱいに綱吉の顔が広がって、獄寺はバッターンッ!と後ろにひっくり返る。

「痛つつつつ…」
 長い脚を曲げながらぶつけた後頭部を擦る獄寺に、綱吉は一瞬きょとんとしてクスクス笑い出すと、
「もう、仕方ないなあ、獄寺くんは」
 手を伸ばし、掴まんなよ、と助け舟を出す。

「あ…ありがとうございます」

 恐れ多くもキュッと掴んだ綱吉の手はひんやりしていた。
 男なのに白い腕は、汗を掻いているはずなのに、獄寺にはひどく清涼に見えた。




 
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