短編小説B 

□獄誕、another side
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 ぱしゃん、と跳ねた澄んだ水飛沫。


 † † †


 さっきから、
(くそっ、ドキドキするぜ…!)
 きゃあきゃあと騒ぐガキ共の喧騒は遠い彼方。俺の視線は10代目に釘付けだ。

(…細っせぇ腰)
 細い肩、細い腕。

(男だってのに、そこら辺の女より華奢だ。抱きしめたら折れちまいそう…だ、抱きしめる!? 抱きしめ抱きしめ抱きしめ)
「〜〜〜げふぉあッッ!?」
 バッチャン!!

「どうしたの? 獄寺くん溺れた!?」

 ザバァ!
「いえ、何でもありません。それより今日はお付き合いくださってありがとうございます。あの…良かったんスか? 野郎と二人でプールなんて」
 健康的に日焼けした肌を透明な水が滴る。それだけなのに、なんでこんなに目を奪われるのか。
(綺麗だ)
 まさに、神の造りたもうた奇跡。

「そんな事! 嫌なら来ないし…家に居ても暑いだけだし、リボーンもうるさかったしさ? 誘ってくれて、嬉しかったんだ。ありがとうね」
 えへへー、って無邪気に微笑む10代目。なのに、
(う…っ!)

 ぱっしゃん。

「獄寺くん?」

 スイマセンスイマセン10代目! 微笑む貴方の笑顔はまるで天使のソレなのに、不埒な俺はさっきから、普段見えない貴方のあんなトコやそんなトコ、気になってチラチラ見ちまって…!
(乳首…ピンクだ。水着のライン、ヤバくねぇか!? ヘソ!ヘソ可愛…っ)

「いい天気だねぇ。ってか焼けそう。母さんがさ、日焼け止め塗りなさいって持たせたんだけど、男がそんなのわざわざ塗んないよねぇ。獄寺くんも塗んないでしょ?」

『ねぇ…ココ、手が届かないんだ。塗ってくれない?』

“だ・い・じ・な・ト・コ・だ・か・ら”

Σバッチャン!

━━━…是非とも塗らせて下さい10代目ぇ!!

…とも言えず、顔からブクブクと沈み込み、ブククッと鼻を押さえる俺。

「…ど、どうしたの、平気!?」
 パチャパチャと水を掻き分け、心配そうに首を傾げて10代目は俺の様子を窺う。

(裸体!半裸のお肌がぁあ…!)
「いえッ大丈夫っス!何でもないっス!」
 ガハアッと復活した俺は、ぶんぶん首を振って一歩下がる。

(今触られたら勃っちまう!心頭滅却心頭滅却━━━ッッ!!
…ん?)
 冷静になろうと頭の中でぶつぶつ素数を数え出した俺を、気付けば10代目はじっと眺めてて。
 ヤバい、危ない妄想がバレたのか?

「? ど、どうかなさったんですか? 10代目」

「んー…、そういえば、暑いけど、来月にはもう9月で、獄寺くん誕生日なんだよねぇって思って」

「ああ、そうっスね。夏休みも終わって、学校が始まっちまいますね。面倒くせぇったら」
(そうは言っても、理由をこじつけなくても10代目に会える学校は、俺にはありがてえけどな!)
 心の中でガッツポーズ。

 内心の喜びを抑えきれずヘラッと笑いかけて、俺はまだ10代目に見つめられている事に気づいてドキッとした。

「じゅ、じゅー代目?」
 ドキドキドキ、
(何だ? 沈黙…、ずっと見られてたのか? 妙に甘ったるい、意味有り気な視線…)

 うっとり潤んだ、飴色の瞳。

(うっわ…!)
 余りに長く見つめられて、俺の背中をゾクリと甘い痺れが走る。

(何だこれ何だこれ、まさかまさかまさか!?)
「あの、10代━…///「ねぇ、獄寺くん」

 ドクン、と呼吸が止まる。

 俺、自惚れちまってもいいですか?




 夢みるような唇から最愛の言葉が紡がれたのは、数秒後だった。




 

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