短編小説B 

□『キスから始まる進化論』
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「あれ?ビア姉?」
「あら」

カシャン、と互いの家の鍵を掛ける。同じフロアのマンションの隣同士。

「今から大学?女子大生って遅いんだ」

「今日は一限が休講だったのよ。今から出掛けるところ」

「ふうん」
綱吉はチラッとビアンキの顔を見る。
時間を確かめるように手首の洒落た時計を見る伏せた顔、長い髪の奥の形のいい耳、綺麗な爪。

(…やっぱ似てるし!)
美形姉弟め!と胸の中で毒づく。

「ツナこそどうしたの? 学校は」
私服の綱吉に首を傾げる。

「あ、今日創立記念日なんだ。それで暇だしゲームでも買いに行こうかと」
嬉しそうに財布を見せる綱吉に、あら、とビアンキは納得する。

それにしても。

(…可愛いわね)
じっと見る。

私服の綱吉はそれはそれは可愛いらしかった。上から下まで、多分奈々の趣味なのだろう。
ユニセックスな水色のカーゴパンツに七分袖のボーダー。

「ビアンキ?」
首を傾げる仕草も、まるで女の子だ。ビアンキは頬に手を当てクスリと笑む。
(そうね、この格好もとてもキュートなんだけど)

「ツナ、暇ならちょっといらっしゃい。頼みがあるの」

「へ? は!??」
そう言って今閉めたドアの鍵を開け、状況の掴めない綱吉を引きずって中に入れる。

(Σ何なの―――!?)
「ビアンキ、ちょ…!」
ひぃい、となる綱吉。



バタン!

抵抗するのはさも無駄だというように、無情にも獄寺家の玄関は音を立てて閉まった。


 † † †


(もう!!ビア姉ったら…!)
綱吉は校門の前でもじもじとする。

(う〜〜、足がすうすうする…!)
ヒラヒラ心許ないスカート、手には弁当箱を携えて。

『あの子ったら、お弁当忘れて行ったらのよ。時間があったからせっかく作ったのに』

いやいやいやι
(確信犯で置いて行ったんだと思うから、ビアンキ!)
この美しい女性は、残念ながら料理の才能が全くと言っていい程ない。

『届ける手間が省けたわ。もう彼が迎えに来るって連絡があったの』
ちゃおっス、と言うケータイの留守電にポッと頬を染める。

(――けどさ!?)

「何で女子の制服なんだよビアンキのバカ…っ!!」
綱吉は思わず声を荒げる。

『楽しいからよ』
ビアンキは平然と告げ悪どく笑った。

『私の当時の制服が入って良かったわ。隼人も喜ぶでしょうよ』
フフ、と笑って家を出る。

そう、綱吉は今ビアンキの制服を着て獄寺の通う中学の前にいるのだ。

(誰が、喜ぶって!?)
キッと前を睨む。

(こうなったのも、ぜーんぶ隼人のせいなんだから!!)

ダンッ!

ムカムカしながら険しい顔で思い切って校門をくぐる。

後で絶対ゲームソフトは隼人に買わせてやる!、と胸に誓いながら。


―――


幼なじみ獄ツナのその後が見たいとあったので(笑)


既作がにもあります。良かったらどうぞ♪


 
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