短編小説B 

□『始まりのくちづけ』
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「――…っや…」
ギシリとなるベッドに呼吸が止まった。
ベッド上の窓からオレンジ色の西日が差し込み、綱吉の顔を橙々色に染め上げていく。

「は…なしてよ」
真上に被さる俺の視線から逃れるように顔を背け、動揺して揺れる瞳は、掴まれベッドへと固定された手首へと向けられて。

ピクリと動いた指の動きと甘そうな唇に、誘われるように俺は顔を近付けた。


―始まりのくちづけ―


「何?手紙もらったの?」

奈々に頼まれて苺を届けに来たのは、勝手知ったる綱吉の幼なじみ、隼人の家だ。

『苺、沢山頂いたのよー♪』
少女のように語る母。
彼女はそう言いながら、海外出張の多い隼人の両親の代わりに獄寺家の世話をやいていた。
勿論過度にならない程度に、だ。

苺のついでに隼人に宿題を教えてもらおうと部屋に上がり込んだ綱吉は、机の上に数枚の綺麗な封筒を見付け憮然となる。


(ちくしょう、ちくしょう、いいなぁあ…!)
なんで隼人ばっかり?
ムーッとする。

(同じ男なのに、しかも誕生日も1ヶ月しか違わないのに、隼人は中学になってからかなりモテるようになっちゃってっっ)

無論頭の出来も違うから、通う学校も離れてしまった。

頬を膨らまし可愛くむくれながら差し入れの筈の苺を頬張る綱吉を、呆れたように息を吐き見て、獄寺はテーブルの向こうから吐き捨てた。

「ラブレターが、んないいもんかよ。アイツら、人をアイドルか何かみてーに祭り上げて、騒いでる自分に喜んでんだ」
シャク、と苺をかじる。

(…たく、何が嬉しくて女にモテたいんだ?自分の方こそ女みてーな顔して…)

付き合いは変わらないものの、やはり学校が変わった分、会う機会は前より減った。

初めて会った時は女の子だと思った。幼稚園の時だ。
越してきた挨拶にやってきた綱吉に、一目惚れしてプロポーズした俺は随分マセていたんだと思う。
綱吉は訳がわかってなくてきょんとして、それでも目も眩むような微笑で
『うん!僕、はやとのおよめさんになるー♪』と、にぱーっと答えたもんだから、そこで俺は失恋したものだった。
…苦い思い出だ。

(…可愛くなってねーか?益々…)
体つきは14の男とは思えねー位華奢で。

亜麻色の柔らかそうな髪、落っこちそうなくらいでっかい飴色の瞳、白くて滑らかな肌。

(自分はモテないなんて言ってっけど、実際コイツを狙ってる奴は一杯いると思う)
きっと互いに牽制掛け合ってんだ。

そう思うとムカムカしてきた。

同じ学校でない自分にむかつく。どーでもいいと、流されるまま中学は親父の言う私立の学校なんか入っちまったけど。

「高校はな」
「え?」

ぼそっと呟くと、きょとんと首を傾げて此方を伺う。

「〜〜…っ!女を知らねーお子ちゃまはガキだなって言ったんだッ」
その仕草に何故だかグッときて、態と悪態を付く。

「そんな言い方ないだろ!?自分は経験あるからって!」
綱吉もカッときて言い返す。

「経験?あー…こーゆー事、か?」
「う…っわ!??」

売り言葉に買い言葉で綱吉を引き寄せる。細い手首、グイッと手を引いてベッドに押し倒す。

「何すんだよっ!!」
怒る綱吉に、なんでしょうねぇ、と勢いのまま熨し掛かり組み敷く。

「ほーんと、いつの間にかこんなんなっちまって」
(細っせーの…)

ス…ッ

「あっ//」
「…あ!?」

ピキーン、二人して固まる。

(おおお俺…っ!??)

今何やった?
綱吉のシャツから手ぇ入れて、腹なんかさすった…?

ダラダラと汗を掻く。

…熱い。
(冗談で組み敷いた身体は華奢で細くって白くって…)

「は…なしてよ…っ」
何だか視線を逸らす綱吉が、色っぽくて煽情的で

ギシリと鳴るベッド。





(―…やべぇ…)


苺色に艶めく唇、ピクリと震えた指先に、誘われるように俺は顔を寄せていった。


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企画に出させて頂きました幼なじみな獄ツナです。この後続編が続きます(笑)
読んで頂きありがとうございましたo(^-^)o

 

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