短編小説B 

□『真夏の群青』
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「オレあんまり絶叫系は得意じゃないんだけど、これはちょっと乗りたかったの」
綱吉が目指したのは最近出来たというアトラクション。
丸いボートに乗り、高い所から水の上を洗濯機さながら回転しつつ流され落ちるというやつだ。

「うへぇ、混んでますね!」

「人気あるからねー」
(…にしても最後尾で3時間待ちって一体…ι)
流石にツナもこの列の長さを見て辟易する。

「あ、俺飲み物と何か軽い食べ物買ってきます。
並んでてもらえますか?」
列に並ぶ時間を考慮して、獄寺は気をきかす。

「うん、ごめんね?よろしく!」
はい!と嬉しそうに駆け出していく獄寺に、ヒラヒラと綱吉は手を振った。

(ふぅ…)
溜め息を吐く。

…来ちゃったなぁ、とうとう。
(楽しみな反面、ちょっとドキドキ…いつになっても慣れない気がするんだ。君と居ると)

…心臓、壊れるんじゃないか、と。



夏休みで、『泊まりで遊び』、なのだ。


カァッとなる。
はぁ、溜め息というより甘い吐息を吐く綱吉。

「ねぇ、彼女1人ぃ?」
そんな風にぼんやりしてたら声を掛けられた。二人組の高校生っぽい奴ら。

「は?」
(なんだかなぁ、最近オレよく声掛けられる…そんなに女の子に見えるのか)
うーんι
少し落ち込む。

『貴方が声を掛けられるのは、貴方が身に纏うフェロモンのせいです!』

獄寺がいたらそう言うに違いない。
それくらい、憂いている時のツナには色気がある(だとしたら責任の半分は獄寺にあるのだろうが)。

「…連れがいるんで。それにオレ男だし」

「「男!?」」
ギョっとされた。失礼だな!

「え!?マジで?こんな可愛いのに」

(…可愛いって言われても嬉しくない…)
ムッとするツナ。

変だな。獄寺くんが言う『可愛い』は、ちょっと、いや、かなり? う…嬉しいのに…

(あの時、の)

『…可愛いっス、10代目…』

(うっわ…///!!)
『あの時』の、熱に浮かされたような恋人の顔を思い出す。

暗い部屋で、オレを組み敷いて自由を奪って、心も躰も好きにして━…、

汗と、涙と、声も、感触も

(全てが君に、溶かされるような━…)

ずくん、と体が熱くなり、チラッと、獄寺と比べるように声を掛けてきた奴等を見上げる。すると、彼らの顔がみるみる間に赤くなっていった。
その時、

「この人は、俺のもんだッ!!」
買ってきた飲み物と食べ物を抱えつつ、ガッと間に入り込む銀色の影。

「ご、獄寺くん!?」

「10代目に近づく奴等は皆果てろ!!食らえ必殺の━…ッ」
食べ物をベンチに死守しつつ、ダイナマイトをズザザザザッと指に挟んで行く獄寺の様を見て、綱吉はひぃぃい!!っと制止を入れた。

「スト━ップ!!ストップってば獄寺くんっ!!」

その場は騒然となった。


 † † †


 
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