短編小説B 

□『発情期は超大変!』
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「…あ…!」
ツナたんはハッとする。
自分が発情期だと知らされた今朝から、なるべくオスを刺激しないように心掛けていたのに…!
(だって、自分でも持て余してるのにこの躰…っ)

昼間は隼人と2匹っきりだったのだ。ケージを介しても、隼人の視線を感じて。

(怖い、怖い、怖い)
ガタガタ震える。

本当はもう知っている。
偉そうに、態度はでかいけど、隼人くんは小さいからって、オレを苛めたり馬鹿にしたりしないって事。
(ご飯をひっくり返しちゃった時も、リードに絡まった時も助けてくれて)
呆れた顔で、でも不器用な優しさが伝わって。

(だからこそ、隼人くんに捕まりそうで、捕まったら自分がどうなるか分からなくて、それがすごく怖かったのに━…)



「……何、君、もしかして発情期なの?」
雲雀の言葉に、ハッと我に帰る。

「そんなに小さいのに、『もう』なんだ。もしかして、この図体デカいのが伴侶?」

『もう』、と言われ恥ずかしくなる。
更に『伴侶』の二文字にカァアッと赤くなるツナたん。

雲雀は何故だか苛っとした。
(否定しないわけ…ふぅん、生意気)
大して興味を抱いていなかったはずなのに。
発情期特有のフェロモンに毒されたのだろうか。この子が、自分ではなく他の雄を選ぶのだと思うと、腹の底から気にくわない。

そんなツナたんの動揺した態度に、隼人も目を見開く。
(ツナたんが、俺を意識している…?)

「ツ…ツナた」
「ねぇ」

隼人の声をわざと遮るように雲雀は吠えた。




 
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