短編小説B ![](http://id48.fm-p.jp/data/206/rose5927/pri/7.jpg)
□『発情期は超大変!』
3ページ/4ページ
「…あ…!」
ツナたんはハッとする。
自分が発情期だと知らされた今朝から、なるべくオスを刺激しないように心掛けていたのに…!
(だって、自分でも持て余してるのにこの躰…っ)
昼間は隼人と2匹っきりだったのだ。ケージを介しても、隼人の視線を感じて。
(怖い、怖い、怖い)
ガタガタ震える。
本当はもう知っている。
偉そうに、態度はでかいけど、隼人くんは小さいからって、オレを苛めたり馬鹿にしたりしないって事。
(ご飯をひっくり返しちゃった時も、リードに絡まった時も助けてくれて)
呆れた顔で、でも不器用な優しさが伝わって。
(だからこそ、隼人くんに捕まりそうで、捕まったら自分がどうなるか分からなくて、それがすごく怖かったのに━…)
「……何、君、もしかして発情期なの?」
雲雀の言葉に、ハッと我に帰る。
「そんなに小さいのに、『もう』なんだ。もしかして、この図体デカいのが伴侶?」
『もう』、と言われ恥ずかしくなる。
更に『伴侶』の二文字にカァアッと赤くなるツナたん。
雲雀は何故だか苛っとした。
(否定しないわけ…ふぅん、生意気)
大して興味を抱いていなかったはずなのに。
発情期特有のフェロモンに毒されたのだろうか。この子が、自分ではなく他の雄を選ぶのだと思うと、腹の底から気にくわない。
そんなツナたんの動揺した態度に、隼人も目を見開く。
(ツナたんが、俺を意識している…?)
「ツ…ツナた」
「ねぇ」
隼人の声をわざと遮るように雲雀は吠えた。